明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
 玲子は括り紐を解き、一枚一枚を丁寧に並べていく。
 将吾は、彼女の手元をじっと見つめた。顔色こそ変えなかったが、その目には慎重な緊張が走っている。

「……あのとき、菊屋で見た帳簿。それだけでは、証拠としては弱いと思っていた」

 玲子は静かに手元の紙を差し出す。

「ですから、ほかの証拠も探しました。これは、薬の配合が記された調合記録。そして、こちらは輝明様の筆跡で書かれた研究ノート……処方の意図。使用された成分と分量。そのすべてが、輝明様自身の字で記されています」

 将吾は手に取った紙束をしばらく見つめ、ふっと息を吐いた。

「……これで、すべてが繋がった。疑いだったものが、確証に近づいたな」

 将吾の低い声が静かに響く。

 玲子は、胸元にそっと手を添えながら、小さく頷いた。

「……これは、一将様が導いてくれたこと、尚文様が話してくださった輝明様のこと……、そして、将吾様が一緒に菊屋薬舗へ来てくださったこと。皆さまのお力があってこそ見つけられたのだと思います」

 玲子は視線を伏せ、噛みしめるように言葉を続けた。

「これを……見過ごすことだけは、できませんでした。舞踏会での件に関する証拠はありませんが、おそらく、元は一つだと……」

「ああ、俺も同じ考えだ」

「舞踏会の時のように、将吾様の命が、再び脅かされるようなことがあっては、なりません」

 その声はただ、静かに、強い意思がこもっていた。
 将吾は少しだけ顔を伏せ、そして、穏やかな声音で返した。

「……玲子殿、本当にありがとう」
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