明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
「でも……わたくし、思い切り……叩いてしまって……」

玲子が恐る恐る顔を上げた。
長いまつ毛に縁どられた黒い瞳。
月の光に照らされたその表情は、どこか心細くて……美しかった。

(こんな瞳をして、誰かを陥れるような真似ができるのか……?)

そんな問いが、将吾の中に浮かぶ。

「普段の訓練に比べたら、ご令嬢に叩かれたくらい、蚊が止まったようなものです」

軍人としての苦労話のひとつ、というように、将吾は軽く肩をすくめてみせた。

「……でも……痛かったですよね? わたくし、あんなに……」

「本当に、大丈夫です」

 そう言って、将吾は微笑んでみせた。
 普段、家から出れず、人付き合いの無い玲子。令嬢たちの憧れの人である将吾の笑みに、どう返していいのか見当もつかず、戸惑い、うつむいてしまう。
 その姿に、将吾は静かに言葉を続けた。

「あのような事をした理由をお聞きしたい」

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