明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
将吾の告発に、分家筋の者たちは動揺を隠せなかった。
だが輝明は、なおも落ち着き払った様子で扇を口元に添える。
「……証拠もなく言い立てるのは、軽率ではないかね」
その一言に空気が揺らいだ。だが、今度は尚文が口を開いた。
「証拠はある」
その声はいつもの柔らかさを欠き、冷えた響きを持っていた。
「舞踏会で毒を盛ろうとした給仕は、翌日、川に浮かんで死体となって発見された」
分家衆がどよめく。輝明の扇が、わずかに震えた。
「だが、それだけではワシがやった証拠にはならぬ」
輝明が静かに言い返す。
尚文は首を横に振り、さらに言葉を重ねた。
「ところが、その男の母親が語ったのだ。息子は死の数日前、家に大金を置いていったと」
「大金……だと?」
「しかも言い残している。『旦那様から特別な仕事をもらった』と」
広間に沈黙が走る。
年配の一人が青ざめ、低く呟いた。
「輝明様……? それは、まさか……」
視線が一斉に輝明へと注がれる。
玲子には、その瞬間、輝明を包む黒い影が濃くうねり始めたのがはっきりと見えた。
だが輝明は、なおも落ち着き払った様子で扇を口元に添える。
「……証拠もなく言い立てるのは、軽率ではないかね」
その一言に空気が揺らいだ。だが、今度は尚文が口を開いた。
「証拠はある」
その声はいつもの柔らかさを欠き、冷えた響きを持っていた。
「舞踏会で毒を盛ろうとした給仕は、翌日、川に浮かんで死体となって発見された」
分家衆がどよめく。輝明の扇が、わずかに震えた。
「だが、それだけではワシがやった証拠にはならぬ」
輝明が静かに言い返す。
尚文は首を横に振り、さらに言葉を重ねた。
「ところが、その男の母親が語ったのだ。息子は死の数日前、家に大金を置いていったと」
「大金……だと?」
「しかも言い残している。『旦那様から特別な仕事をもらった』と」
広間に沈黙が走る。
年配の一人が青ざめ、低く呟いた。
「輝明様……? それは、まさか……」
視線が一斉に輝明へと注がれる。
玲子には、その瞬間、輝明を包む黒い影が濃くうねり始めたのがはっきりと見えた。