明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
玲子は驚いたように瞬きし、それから小さく首を振った。
「……いえ、大丈夫です」
しばし沈黙が流れ、涼やかな夜風が庭園の緑を撫で、遠くで小さな虫の声が聞こえる。
将吾は視線を逸らし、低くつぶやいた。
「……祖父がな。かつて、藤堂の跡継ぎになるなら、強さと誠実さを持て、と言っていたことがあ。俺はまだ、……その言葉に届いていないのかもしれない」
そう呟く将吾の声は、初めて玲子が聞く、どこか人間らしい響きを持っていた。
「あの……」
と、玲子が言いかけたところで「おーい」と声が掛かる。
声の主は藤堂尚文だ。
「探したよ、将吾。あっ、さっきのご令嬢だね」
そう言って、尚文は少し屈んで玲子へと視線をあわせた。
しかし、泣きはらした玲子の顔を見た尚文は、スッと目を細める。
「将吾、お前、手を叩かれたぐらいで、ご令嬢を責めたてて泣かすなんて、器が小さすぎて引くわー」
「いや、これは……」
言い訳をしようとした将吾だったが、言われても仕方のない状況に何も言い返せない。
「将吾みたいに身体の大きな男、それも軍隊仕込みのしゃべり方で、話されたら誰だって怖いって。もう少し女性に気を使う事も覚えないと、誰も嫁に来てくれないぞ」
将吾より、2歳年上の尚文は、柔らかい口調で窘める。
その尚文の横で、再び姿を現した幽霊の一将は、ウンウンとうなずいていた。
「……いえ、大丈夫です」
しばし沈黙が流れ、涼やかな夜風が庭園の緑を撫で、遠くで小さな虫の声が聞こえる。
将吾は視線を逸らし、低くつぶやいた。
「……祖父がな。かつて、藤堂の跡継ぎになるなら、強さと誠実さを持て、と言っていたことがあ。俺はまだ、……その言葉に届いていないのかもしれない」
そう呟く将吾の声は、初めて玲子が聞く、どこか人間らしい響きを持っていた。
「あの……」
と、玲子が言いかけたところで「おーい」と声が掛かる。
声の主は藤堂尚文だ。
「探したよ、将吾。あっ、さっきのご令嬢だね」
そう言って、尚文は少し屈んで玲子へと視線をあわせた。
しかし、泣きはらした玲子の顔を見た尚文は、スッと目を細める。
「将吾、お前、手を叩かれたぐらいで、ご令嬢を責めたてて泣かすなんて、器が小さすぎて引くわー」
「いや、これは……」
言い訳をしようとした将吾だったが、言われても仕方のない状況に何も言い返せない。
「将吾みたいに身体の大きな男、それも軍隊仕込みのしゃべり方で、話されたら誰だって怖いって。もう少し女性に気を使う事も覚えないと、誰も嫁に来てくれないぞ」
将吾より、2歳年上の尚文は、柔らかい口調で窘める。
その尚文の横で、再び姿を現した幽霊の一将は、ウンウンとうなずいていた。