明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
「あー、やっぱり無理か」
尚文は肩をすくめて笑い、将吾は小さくため息をついた。
「……見えないな」
「じゃあ、玲子君の目には、おじい様はどんなふうに見えてるの?」
問いかけられた玲子は、一将をじっと見つめ、丁寧に答えた。
「年の頃は三十路くらいでしょうか。着物をお召しで、大小の刀を腰に差していらっしゃいます。髪は短く整えられていて……目元がおふたりによく似ていらっしゃる。彫りの深い顔立ちで、綺麗な二重の瞳をされています」
言われた一将は、むずがゆそうに視線を逸らし、頬をぽりぽりと掻いた。
「……あー、わかる。家にある昔の写真、おじい様って、たしかそんな風体だったよ。……それで、そのおじい様に頼まれて、葡萄酒を飲ませないように手を叩いたんだね?」
「はい。……わたくしは、犯人ではありません。それに、犯人を知っているわけでもないんです。どうか、信じてください」
玲子の声は切実だった。
人生の明暗が掛かった、必死の訴えだった。