明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~

「あー、やっぱり無理か」

 尚文は肩をすくめて笑い、将吾は小さくため息をついた。

「……見えないな」

「じゃあ、玲子君の目には、おじい様はどんなふうに見えてるの?」

 問いかけられた玲子は、一将をじっと見つめ、丁寧に答えた。

「年の頃は三十路くらいでしょうか。着物をお召しで、大小の刀を腰に差していらっしゃいます。髪は短く整えられていて……目元がおふたりによく似ていらっしゃる。彫りの深い顔立ちで、綺麗な二重の瞳をされています」

 言われた一将は、むずがゆそうに視線を逸らし、頬をぽりぽりと掻いた。

「……あー、わかる。家にある昔の写真、おじい様って、たしかそんな風体だったよ。……それで、そのおじい様に頼まれて、葡萄酒を飲ませないように手を叩いたんだね?」

「はい。……わたくしは、犯人ではありません。それに、犯人を知っているわけでもないんです。どうか、信じてください」

 玲子の声は切実だった。
 人生の明暗が掛かった、必死の訴えだった。
< 29 / 234 >

この作品をシェア

pagetop