明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
ただ、自分より苦労をしてそうな、幽霊の女になら愚痴を言っても許される気がした。

「わたくし……商家のお年寄りのところへ、嫁がされるかもしれないんです」

『あら、お嬢さんも大変だったのね! アタイはさ、親に売られて、女郎屋行きよ。やっと年季が明けたと思ったら、今度は男に騙されてさ、借金まみれで捨てられて、最後は客に首絞められて、はいサヨナラよ。ほんと、ついてない人生!』

 玲子の視線は、幽霊の首元に留まった。そこには、くっきりと手の跡が残っている。

「……それは、無念でしたね」

『そうよ、無念だよ! 死んだら、美味しいもんも食えやしない。そんなの、つまんないじゃない。だからさ、生きてるうちに、やりたいことやんな。あんた若いんだし、今、死んだらもったいないって』

 あまりにあっけらかんとした物言いに、沈んでいた玲子の心がふわりと浮かび上がる。

「……この世に生まれた後悔はあっても、自ら死を選ぶことは致しません。生きたいと願っていても生きられなかった方々がいらっしゃるのに、自分から命を絶つような真似は……できません」

『そう、それでいいのよ。なら、ひとつお願いがあるんだけど』

「お願い、ですか?」

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