明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
暗い霧の中から、ふいに《《悪しきモノ》》の気配をまとった、頬に傷のある男が現れた。
はだけた着物の内側に手を差し入れ、左手には棒のような物を握っている。
まるで蛇のような目つきで、じりじりと玲子を見据えてきた。
「……ほう、近くで見ると、なかなかの別嬪さんじゃねえか。殺すには惜しいな。一緒に来てもらうか」
男はにやりと笑い、棒状の物をゆっくりと引き抜く。
鈍い光を放つ刃。
それは、匕首(あいくち)だった。
玲子は一歩も動けず、目を見開いたまま立ちすくむ。
男は刃をチラつかせながら、まるで玩具をもてあそぶかのように、玲子の頬へと刃先をなぞった。
「ひっ……」
「静かにしろ。声を出すな」
低く、ねっとりとした声音に、玲子は壊れた人形のように首を縦に振るしかできなかった。
「お前……榊原玲子、だな?」
名前を呼ばれた玲子は、目を大きく見開いた。
なぜこの男が、自分の名を……。
はだけた着物の内側に手を差し入れ、左手には棒のような物を握っている。
まるで蛇のような目つきで、じりじりと玲子を見据えてきた。
「……ほう、近くで見ると、なかなかの別嬪さんじゃねえか。殺すには惜しいな。一緒に来てもらうか」
男はにやりと笑い、棒状の物をゆっくりと引き抜く。
鈍い光を放つ刃。
それは、匕首(あいくち)だった。
玲子は一歩も動けず、目を見開いたまま立ちすくむ。
男は刃をチラつかせながら、まるで玩具をもてあそぶかのように、玲子の頬へと刃先をなぞった。
「ひっ……」
「静かにしろ。声を出すな」
低く、ねっとりとした声音に、玲子は壊れた人形のように首を縦に振るしかできなかった。
「お前……榊原玲子、だな?」
名前を呼ばれた玲子は、目を大きく見開いた。
なぜこの男が、自分の名を……。