明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
「榊原男爵の妾腹の子で、母親の失踪後、相当ひどい扱いを受けている。普段は、まるで使用人のような生活らしい」

「……そうか」

「しかも最近、継母が彼女の嫁ぎ先を探しているそうだ。条件は支度金が高いこと、つまり、金さえ払えば誰にでもくれてやるつもりらしい」

 あまりに無慈悲な言葉に、将吾は顔をしかめる。

「なんだと……。仮にも男爵家の令嬢だぞ!」

「だろう。……で、驚くのはこれから。なんと松林屋の大旦那が、後妻に望んでるそうだ」

「松林屋って……あの?」

「ああ、還暦近いあの松林吉壱だ。どう考えても、孫と言ってもおかしくない年の差だろ? まるで女郎屋の身請けだよ」

 将吾は拳を握り締め、激しい怒りに眉を寄せる。

「そんな話、許せるか……!」

 それとは対照的に、尚文はどこか余裕のある笑みを浮かべた。

「このまま家に戻せば、身の危険だけじゃなく、不幸が待っていると分かっていて……戻せるわけがないよな?」

「ああ……」

「そこで、提案だ」

「なんだ?」

「玲子君を保護するなら、俺が預かってもいいよ」

 尚文からの突然の申し出に、将吾は顔をひきつらせた。

「……冗談だろう?」

「いや、本気さ。責任を持って預かるつもりで言ってるんだ」


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