明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
階段を下りて一階の玄関ホールへと辿り着く。
高い天井にシャンデリアが煌めき、大理石の床に柔らかなランプの灯りが落ちる。
一将が、左手の部屋を顎で示した。
『ほれ、そこじゃ。将吾がおる』
玲子は一度だけ深呼吸をして、緊張した面持ちでドアの前に立つ。
そして、ためらいがちに指先を伸ばし、小さくノックした。
コンコン。
少しして、開いた扉から、着流し姿の将吾が現れた。
玲子の顔を見た瞬間、どこか張っていた糸が緩んだように、将吾の表情がやわらぐ。
「目覚めたのか。……具合はどうだ?」
「はい、おかげさまで、すっかり良くなりました。ありがとうございました」
「それなら良かった。少し、話を聞かせてもらってもいいかな?」
将吾は部屋の中へ玲子を招き入れる。
そこは応接室らしく、中央には重厚な三人掛けのソファと、対になる一人掛けの椅子が置かれていた。
その重厚なソファの真ん中に座っていたのは、きちんとしたスーツ姿の尚文だった。
「やあ、玲子君。おいしいお菓子があるよ」
にこやかに言いながら、尚文は腰を少し浮かせ、自分の隣のスペースを示す。
しかし、それを見ていた将吾が即座に口を開いた。
「玲子殿、こちらへ」