明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
尚文の穏やかな視線が、涙に濡れた玲子を優しく包み込む。
そんな二人の様子に、将吾の胸の奥にモヤモヤとしたものが生まれていた。
(……なんだ、この気持ちは。)
いてもたってもいられず、将吾はすっと玲子に近づくと、背と膝に手をまわして、ひょいと抱き上げた。
「きゃっ……!」
突然のことで、玲子は短い悲鳴を上げ、驚きで言葉を失う。
「早々、榊原家には話をつけに行く。だから、玲子殿は安心してこの家で過ごせばいい。……今日は、いろいろあって疲れているだろう。部屋で休むんだ」
そのまま、玲子を抱えたまま部屋を出て行こうとする将吾。
尚文は驚き、慌てて背中に声をかける。
「おい、将吾……お前ってやつは……!」
将吾は振り返りざまに、口元にふっと笑みを浮かべて言った。
「玲子殿を保護したのは俺だ。この件は、俺に任せてくれ」
そう言い残すと、足早に部屋を出て行った。
ぽつんと取り残された尚文は、肩を落としながらぽつりと呟いた。
「……まさか、あの将吾が、本気……か?」
そして、一部始終を見ていた一将は、相貌をほころばせる。
『ほうほう……これは面白くなってきおったわ』