明治恋奇譚 〜藤堂様、ミエテマスヨ!~
いきなりの問いに、玲子は思わず黙り込む。
背が高く、凛々しい将吾。
柔らかな雰囲気で優しい尚文。
社交界の令嬢たちの間で人気が二分していたのも、頷ける。
玲子は、そんなふたりを「どちらが良いか」などと言うことが、自分には恐れ多い気がした。
「おふたりとも素敵だと思います。わたくしなんかより、もっと素敵なご令嬢と良いご縁に恵まれることでしょう」
その言葉に、一将はムッとした顔をつくる。顎には深い梅干し皺が寄る。
『そういうところじゃ、自分を卑下するのが癖になっておる。謙虚さは美徳じゃが、過ぎると毒になるぞ』
育ってきた環境のせいで、玲子の自己評価は低くなっていた。
自分に関することを語るとき、無意識に「なんか」と言ってしまう。
言葉は、時に言霊となり、知らず知らずのうちに自分の心と行動を縛ってしまう。
良い言葉は人を高め、悪い言葉は人を貶める。
それを知っているからこそ、一将は静かに、しかし真剣に釘を刺したのだ。
玲子は驚きのあまり、目を見開いたまま固まっていた。
榊原の家では、ずっと《《玲子なんか》》と言われ続けてきた。それが当然だと、いつの間にか刷り込まれていたのだ。
誰からも愛されない自分には、価値がない。玲子はそう思い込むようになっていた。
見ないようにしていた傷口に、言葉が刺さったように、じんと心が痛んだ。
背が高く、凛々しい将吾。
柔らかな雰囲気で優しい尚文。
社交界の令嬢たちの間で人気が二分していたのも、頷ける。
玲子は、そんなふたりを「どちらが良いか」などと言うことが、自分には恐れ多い気がした。
「おふたりとも素敵だと思います。わたくしなんかより、もっと素敵なご令嬢と良いご縁に恵まれることでしょう」
その言葉に、一将はムッとした顔をつくる。顎には深い梅干し皺が寄る。
『そういうところじゃ、自分を卑下するのが癖になっておる。謙虚さは美徳じゃが、過ぎると毒になるぞ』
育ってきた環境のせいで、玲子の自己評価は低くなっていた。
自分に関することを語るとき、無意識に「なんか」と言ってしまう。
言葉は、時に言霊となり、知らず知らずのうちに自分の心と行動を縛ってしまう。
良い言葉は人を高め、悪い言葉は人を貶める。
それを知っているからこそ、一将は静かに、しかし真剣に釘を刺したのだ。
玲子は驚きのあまり、目を見開いたまま固まっていた。
榊原の家では、ずっと《《玲子なんか》》と言われ続けてきた。それが当然だと、いつの間にか刷り込まれていたのだ。
誰からも愛されない自分には、価値がない。玲子はそう思い込むようになっていた。
見ないようにしていた傷口に、言葉が刺さったように、じんと心が痛んだ。