学園天国!!ホクロ様!!

観覧チケット大作戦

「なあ……九条キョウコと同じ位置にホクロあるって、すごくね?」

教室でマサキがスマホの画面を見せながら、半笑いで言った。

「お前さ……九条キョウコになれるんじゃね?」

「はぁ!? 何それ!」
思わず声を上げる。

「だって本物と同じ位置だぞ? しかも“艶ぼくろ”ってやつ」
マサキは肩をすくめて、あっけらかんとした調子。

……でも私は、そのときぽろっと本音を漏らしてしまった。

「……九条キョウコ、生で見てみたいなぁ」

「は? テレビで十分だろ」

マサキのツッコミが響いた次の瞬間。

「えええ!? イナちゃん今なんて言った!?」
「九条キョウコ、生で見たいって!?」
「よし……観覧チケットだ!!!」

教室の空気が一気に爆発した。



「俺、親戚がテレビ局いるから聞いてみる!」
「いや、ウチの父ちゃん制作会社の人と飲み仲間だ!」
「ちょ、観覧応募もう締切だぞ!?……裏ルート探すしかねえ!」

机をバンッと叩いて立ち上がるやつ、スマホを取り出して必死に連絡し始めるやつ。
さらには黒板に「九条キョウコ観覧作戦」と書き出して会議を始めるやつまで現れた。

(えええ!? なんでそんな必死!? 私のひと言で!?)

教室中がまるで文化祭前夜みたいにざわついている。



「……お前なぁ」
隣で腕を組むマサキが、冷めた目を向けてきた。

「ただのホクロで男子全員振り回すとか、どんな魔力だよ」

「魔力言うな!」

そう返したものの、笑いがこみあげる。
マサキの口元も、ほんの少しだけ緩んでいた。



数日後。

「イナ! 取れたぞ!! 観覧チケット!!!」

男子たちが机の上に封筒を叩きつけた瞬間、教室中が歓声に包まれた。

「これでイナちゃんに感謝されたい!」
「一緒にご飯行こうぜ!」
「いや、デートだろデート!」

叫ぶ男子たちを前に、私はただ唖然とするしかなかった。

胸元に手を当てる。
ホクロはそこにいて、しっかり存在を主張している。

(……やっぱり、ただのホクロじゃないのかも)
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