運命の再会は閉店後に ~小さな奇跡がふたりを結ぶ~
第7話:時は動き出す
「あ、あの柱時計、そのまんまだね」
「うん」
ギドウくんが見ていたのは、柱につけられた大きな振り子時計だ。
たぶん、飾られて五十年くらい経っている。
もう長い間止まっていて、時計としての役割は果たしていない。
「あの時計を見るたびに、あの有名な歌を思い出すよ」
「大きな古時計、だっけ?」
「私たちが子どもの時からずっと動いていないものね」
おじいちゃんが気に入っていた大きな柱時計を私は見つめた。
カチッ。
小さな音がして、時計の針がいきなり動いた。
「えっ」
私とギドウくんは顔を見合わせた。
「今、動いた……?」
ボーン、ボーン、ボーン――。
振り子が左右に動き、柱時計の鐘が鳴り響く。
「……っ」
私たちは言葉もなく柱時計を見つめた。
鳴り終わると、また時計は動かなくなった。
「ええーーー!?」
「今、確かに動いたよね?」
私たちは思わず声を上げた。
「信じられない……」
何十年も動いていなかった時計が、有終の美を飾るかのように最後の時を刻んだ。
私は思わず涙ぐんだ。
「すごい……奇跡ってあるんだ……」
ギドウくんが感動したように目を輝かせている。
「なんだか、勇気をもらえたな……」
「えっ?」
「止まってないで、動き出せってメッセージをもらった気分だ」
そう言うと、ギドウくんが手を組み合わせて私を見た。
「……ハコちゃんはさ、俺に会いたいって思わなかった?」
「えっ……」
「引っ越してから、俺のこと思い出さなかった?」
ギドウくんの真剣な眼差しに、私はどぎまぎしてしまった。
「覚えてたよ、もちろん。でも、連絡先がわからなかったし……」
「俺も気になりつつ、連絡しそこねてたんだ……」
子どもの頃の淡いつながりしかなくて、積極的に連絡をする勇気がなかった。
「実は俺、大学生のとき、一度ここに来たんだ」
「えっ……」
「一作目が売れなくてつらかった時に。でもハコちゃんはいなくて。遠方に働きに出てるって言われて」
私はドキッとした。
言いづらくて黙っていたのだ。
「私、最初の会社を辞めたあと、一度家を出たの。旅館に住み込みで働いて……でもそこもつらくて一年くらいで戻ってきて……」
今思えば、あれは逃避だった。
会社でパワハラやセクハラをされて疲れ切って、閉塞感がある地元を離れたかった。
「どん底の時で……。このままじゃいけない。故郷から出たい、って思ったけど、結局戻ってきちゃって。ギドウくんとは大違いだね」
「そっか……。きっとその時はお互いタイミングが悪かったんだな」
「え?」
ギドウくんがふわっと笑う。
「だって、わざわざ東京から来たのに喫茶店は臨時休業だし、ハコちゃんには会えないし。きっとあの時は再会するタイミングじゃなかったんだよ」
「……」
「でも、今日俺たちは再会できた。お店の最終日の閉店時間に滑り込めた」
ギドウくんがちらっと柱時計に目を走らせる。
「ずっと止まっていた時計が動いた――これって運命じゃない?」
「……!」
熱っぽいギドウくんの視線に胸がドキドキしてきた。
「うん」
ギドウくんが見ていたのは、柱につけられた大きな振り子時計だ。
たぶん、飾られて五十年くらい経っている。
もう長い間止まっていて、時計としての役割は果たしていない。
「あの時計を見るたびに、あの有名な歌を思い出すよ」
「大きな古時計、だっけ?」
「私たちが子どもの時からずっと動いていないものね」
おじいちゃんが気に入っていた大きな柱時計を私は見つめた。
カチッ。
小さな音がして、時計の針がいきなり動いた。
「えっ」
私とギドウくんは顔を見合わせた。
「今、動いた……?」
ボーン、ボーン、ボーン――。
振り子が左右に動き、柱時計の鐘が鳴り響く。
「……っ」
私たちは言葉もなく柱時計を見つめた。
鳴り終わると、また時計は動かなくなった。
「ええーーー!?」
「今、確かに動いたよね?」
私たちは思わず声を上げた。
「信じられない……」
何十年も動いていなかった時計が、有終の美を飾るかのように最後の時を刻んだ。
私は思わず涙ぐんだ。
「すごい……奇跡ってあるんだ……」
ギドウくんが感動したように目を輝かせている。
「なんだか、勇気をもらえたな……」
「えっ?」
「止まってないで、動き出せってメッセージをもらった気分だ」
そう言うと、ギドウくんが手を組み合わせて私を見た。
「……ハコちゃんはさ、俺に会いたいって思わなかった?」
「えっ……」
「引っ越してから、俺のこと思い出さなかった?」
ギドウくんの真剣な眼差しに、私はどぎまぎしてしまった。
「覚えてたよ、もちろん。でも、連絡先がわからなかったし……」
「俺も気になりつつ、連絡しそこねてたんだ……」
子どもの頃の淡いつながりしかなくて、積極的に連絡をする勇気がなかった。
「実は俺、大学生のとき、一度ここに来たんだ」
「えっ……」
「一作目が売れなくてつらかった時に。でもハコちゃんはいなくて。遠方に働きに出てるって言われて」
私はドキッとした。
言いづらくて黙っていたのだ。
「私、最初の会社を辞めたあと、一度家を出たの。旅館に住み込みで働いて……でもそこもつらくて一年くらいで戻ってきて……」
今思えば、あれは逃避だった。
会社でパワハラやセクハラをされて疲れ切って、閉塞感がある地元を離れたかった。
「どん底の時で……。このままじゃいけない。故郷から出たい、って思ったけど、結局戻ってきちゃって。ギドウくんとは大違いだね」
「そっか……。きっとその時はお互いタイミングが悪かったんだな」
「え?」
ギドウくんがふわっと笑う。
「だって、わざわざ東京から来たのに喫茶店は臨時休業だし、ハコちゃんには会えないし。きっとあの時は再会するタイミングじゃなかったんだよ」
「……」
「でも、今日俺たちは再会できた。お店の最終日の閉店時間に滑り込めた」
ギドウくんがちらっと柱時計に目を走らせる。
「ずっと止まっていた時計が動いた――これって運命じゃない?」
「……!」
熱っぽいギドウくんの視線に胸がドキドキしてきた。