見上げた星空に、奇跡が降る
3 昨日と違う瞬き
―オリオン―
次の日。
目が覚めてからずっと、昨日のやり取りが何度も頭をよぎっていた。
《迷い猫》――そう名乗った人からの短いメッセージ。
「毎日ちゃんと星の事をあげるのが凄い」
わずか十数文字のその言葉が、どうしてこんなにも長く心に残るのか、自分でも不思議だった。
僕は、星を見て、それを記録することが当たり前になっていた。
褒められるためでも、誰かのためでもない。自分のためにやってきたことだ。
それを「凄い」と言われたのは、生まれて初めてだった。
午前中、いつものように看護師さんが検温にやって来た。
額にそっと体温計が当てられ、その数値を見た彼女は、ふと顔を上げて僕を見た。
「何かいいことがあったんですか?」
思わず瞬きをする。
……いいこと?
彼女の問いかけで、僕はようやく、自分の口元がほんのわずかに上がっていることに気づいた。
星を見ているとき以外で、こんなふうに心が軽くなることは、今までなかった。
胸の奥にあった重い石が、ほんの少しだけ動いたような感覚。
看護師さんは深く追及することなく、穏やかな笑みを浮かべて病室を出ていった。
残された僕は、ベッドに身を沈めながら天井を見上げた。
もしまた、《迷い猫》とやり取りできることがあったら――今度は、ちゃんとお礼を言おう。
そんな小さな約束を自分に課すだけで、窓の外の青空が、少しだけ近く感じられた。
昼の光に包まれた空は、夜とはまったく違う表情をしている。
でも、その向こうには必ず、昨日と同じ星たちがある。
自分の今の瞬きは、昨日とは違うものになっているのかもしれない。
次の日。
目が覚めてからずっと、昨日のやり取りが何度も頭をよぎっていた。
《迷い猫》――そう名乗った人からの短いメッセージ。
「毎日ちゃんと星の事をあげるのが凄い」
わずか十数文字のその言葉が、どうしてこんなにも長く心に残るのか、自分でも不思議だった。
僕は、星を見て、それを記録することが当たり前になっていた。
褒められるためでも、誰かのためでもない。自分のためにやってきたことだ。
それを「凄い」と言われたのは、生まれて初めてだった。
午前中、いつものように看護師さんが検温にやって来た。
額にそっと体温計が当てられ、その数値を見た彼女は、ふと顔を上げて僕を見た。
「何かいいことがあったんですか?」
思わず瞬きをする。
……いいこと?
彼女の問いかけで、僕はようやく、自分の口元がほんのわずかに上がっていることに気づいた。
星を見ているとき以外で、こんなふうに心が軽くなることは、今までなかった。
胸の奥にあった重い石が、ほんの少しだけ動いたような感覚。
看護師さんは深く追及することなく、穏やかな笑みを浮かべて病室を出ていった。
残された僕は、ベッドに身を沈めながら天井を見上げた。
もしまた、《迷い猫》とやり取りできることがあったら――今度は、ちゃんとお礼を言おう。
そんな小さな約束を自分に課すだけで、窓の外の青空が、少しだけ近く感じられた。
昼の光に包まれた空は、夜とはまったく違う表情をしている。
でも、その向こうには必ず、昨日と同じ星たちがある。
自分の今の瞬きは、昨日とは違うものになっているのかもしれない。