私は‪✕‬‪✕‬を知らない I
「なんでここに居るのさ」


「なんで、って"貴方を買いに来たのよ"」


頬杖をつきながら俺を指差すましろん。その目は逃がさないとばかりに赤く輝いていた。


貴方を買いに。


ましろんは確かにそう言った。


・・・君は全部知ってるんだね。


「はは、君がこういうのに興味あるなんて知らなかった。ましろんみたいに綺麗な子の相手ができて嬉しいよ」


嘘。今にも逃げ出したい。


こんな俺を見て欲しくない。


心の中ではこんなふうに叫んでるのに、身体は慣れた手つきでその陶器のような肌へ触れる。





そのまま唇が触れようとして─────、





「勘違いしないで。私が買うのは貴方の時間よ」


その細い手で顔面を掴まれて離される。いや、顔面て!





まさかの出来事で頭追いつかないんですけど!?


「じ、時間・・・?」


「そうよ。貴方の事について話してくれる時間」


その言葉に一気に冷静になる。


「なーんだ、そういう事。悪いけど話すつもりないよ」


どこか安心した自分には気付かない振りをしてこの場を離れようと立ち上がる。


そんな俺に何処から出したのか茶封筒を突き付けるましろん。


いやもう、さっきから読めないんだけど・・・。


恐る恐る封筒を開ければそこにはお札が10枚。


必要なんでしょ、お金。と彼女は続ける。


確かにこれがあれば・・・。
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