魔法で恋を操る女になった私は、すべてを奪った帝国に復讐する
1話 魔法使い見習いだった私のこと
この国の王子と姫は、私を笑って崖から突き落とした。
それが間違いだったのよ。
そうして私は生まれ変わった。
傾国の魔女、フィロメアとして。
フィロメアは、“誰でも無条件に恋に落ちさせる魔法”がある。
微笑んだだけで、国が一つ傾くの。
帝国の王族を狂わせ、
高官たちを膝まずかせる。
でも、本当の私は、ただの魔法使い見習いの少女だった。
―――――――――――――――――

私は帝国の魔法使い見習いのリシェル。小さい頃から素養はあると周りには言われてきたけど、
だからといってそれで誰かの前に立って何かをしようとか、そんな事は思わない。
孤児院出身という事もあって、私はただ日々を何とか暮らしていければいい、
その為に得意らしい魔法というものに携わっていければいいかな‥‥その程度だった。
なので、目立たないように教室の後ろの隅でおとなしくしてるのが私の日常。
背が低くて赤毛でそばかす顔‥‥何と言うか、普通な感じだ。
そんな中、ここの魔導研究所を卒業したアレクシス先輩が見学に来た。
先輩は亜麻色の髪に灰青の瞳。
穏やかな顔立ちと静かな物腰は、どこまでも優しく、けれど揺るぎない意志を秘めていた。
背は高く細身だけど、立っているだけで周囲の空気が引き締まる。
言葉少なに微笑むその姿に、多くの人が自然と敬意を抱いていた。
先輩は前に立って黒板に魔法についての問題を書いた。前から次々と当てられたけど、誰も答えられなかった。
そうして私の番になり。前に来て黒板に答えを書くように言われた。
向かってる最中、まわりのヒソヒソ声が聞こえてくる。私はいつも一人でいるし、ほとんど喋らないから、
多分、絶対に無理だと思われてたんだと思う。
でも残念。この問題は何度も予習している。早く見習いを卒業して、帝国魔術師として安定した生活を送らなきゃならない。
遊んでる時間がない。
何しろ、私には後ろ盾がないわけで。
「‥‥‥えっと‥‥」
一呼吸置いてから、一気に描きあげた。何だかシンと静まりかえっている中、拍手をしてる人がいる。
「素晴らしいね。見事な解だ」
それはアレクシス先輩だった。振り返った私の顔を見てニコと笑みを浮かべてる。
「‥‥‥‥」
私はどう反応して良いか分からずに、ただ頭をさげる。
後ろの自分の席に戻る時、ふたたびヒソヒソ声が聞こえてきたけど、それはさっきとは内容が違う。
内容的には、あまり気分の良いものでもない。
――孤児が図に乗っている――
それは初めてぶつけられた“嫉妬”という感情だった。
それが間違いだったのよ。
そうして私は生まれ変わった。
傾国の魔女、フィロメアとして。
フィロメアは、“誰でも無条件に恋に落ちさせる魔法”がある。
微笑んだだけで、国が一つ傾くの。
帝国の王族を狂わせ、
高官たちを膝まずかせる。
でも、本当の私は、ただの魔法使い見習いの少女だった。
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私は帝国の魔法使い見習いのリシェル。小さい頃から素養はあると周りには言われてきたけど、
だからといってそれで誰かの前に立って何かをしようとか、そんな事は思わない。
孤児院出身という事もあって、私はただ日々を何とか暮らしていければいい、
その為に得意らしい魔法というものに携わっていければいいかな‥‥その程度だった。
なので、目立たないように教室の後ろの隅でおとなしくしてるのが私の日常。
背が低くて赤毛でそばかす顔‥‥何と言うか、普通な感じだ。
そんな中、ここの魔導研究所を卒業したアレクシス先輩が見学に来た。
先輩は亜麻色の髪に灰青の瞳。
穏やかな顔立ちと静かな物腰は、どこまでも優しく、けれど揺るぎない意志を秘めていた。
背は高く細身だけど、立っているだけで周囲の空気が引き締まる。
言葉少なに微笑むその姿に、多くの人が自然と敬意を抱いていた。
先輩は前に立って黒板に魔法についての問題を書いた。前から次々と当てられたけど、誰も答えられなかった。
そうして私の番になり。前に来て黒板に答えを書くように言われた。
向かってる最中、まわりのヒソヒソ声が聞こえてくる。私はいつも一人でいるし、ほとんど喋らないから、
多分、絶対に無理だと思われてたんだと思う。
でも残念。この問題は何度も予習している。早く見習いを卒業して、帝国魔術師として安定した生活を送らなきゃならない。
遊んでる時間がない。
何しろ、私には後ろ盾がないわけで。
「‥‥‥えっと‥‥」
一呼吸置いてから、一気に描きあげた。何だかシンと静まりかえっている中、拍手をしてる人がいる。
「素晴らしいね。見事な解だ」
それはアレクシス先輩だった。振り返った私の顔を見てニコと笑みを浮かべてる。
「‥‥‥‥」
私はどう反応して良いか分からずに、ただ頭をさげる。
後ろの自分の席に戻る時、ふたたびヒソヒソ声が聞こえてきたけど、それはさっきとは内容が違う。
内容的には、あまり気分の良いものでもない。
――孤児が図に乗っている――
それは初めてぶつけられた“嫉妬”という感情だった。
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