転生小説家の華麗なる円満離婚計画
 ヘンリックはぐっと拳を握りしめた。

「クラリッサ、私もきみの提案に従う。
 私が一方的にマリアを思っていただけだということは、私だってよくわかっている。
 これから時間をかけて、マリアの心を手に入れるよう努力することにするよ」

 決意に満ちたエメラルドの瞳は、いつもの穏やかさを取り戻しつつある。
 ヘンリックが理性的でよかった。

「……一つ、お願いがあります」

 マリアンネが口を開いた。

「お姉様を不当に扱ったり、邪険にしたりしないと、それだけは約束してください」

 マリアンネは、私の手をぎゅっと握りながら告げた。

「もちろんだ。そんなことはしないよ。
 クラリッサのことは、これまでと同じように大切にするつもりだ。
 その上で、マリア、私はきみと仲良くなりたいと思っている」

 真摯に訴えるヘンリック。

「三年も猶予があるんだ。
 焦るつもりはない。
 とにかく、今は結婚式を無事に終えることに集中しよう。
 その後で、またゆっくりと話をしようじゃないか」

 私は頷いた。

「そうですね。そうすることにしましょう。
 そうと決まったら、ヘンリック様は着替えてきてくださいな。
 美味しい夕食を準備してありますから、期待していてくださいね」

< 52 / 147 >

この作品をシェア

pagetop