転生小説家の華麗なる円満離婚計画
「あなたのおかげで、私もマリーも助かったわ。
 ありがとう、エル」

「お嬢……」

「もう大丈夫よ。大丈夫だから、元に戻って。
 これは、きっとあなたの魔力がどうにかなったものよ。
 魔力を制御したら、これもきっと収まって元に戻るんだと思うわ」

 私は動揺に揺れる金色の瞳を真っすぐに見つめた。

「あなたの中の魔力に集中して。
 訓練で何度もしたのと同じことをすればいいの。
 あなたならできるはずよ」

 落ち着いた優しい声で言い聞かせると、彼は瞳を閉じて胸に手を当て集中し始めた。

 正直なところ、私にだって彼の身になにが起きたのかわからない。
 これで本当に元に戻れるかどうかは、賭けでしかないのだ。
 
 もし元の姿に戻れなかったら、きっとエルヴィンは酷い目にあうことになるだろう。

 そんなのは絶対に嫌だ。

(お願い、元に戻って!)
 
 私は祈りながら、自分の魔力と戦うエルヴィンを見守った。

 その祈りが通じたのか、変化が起こったのはそれからすぐのことだった。

 黒い翼が崩れ、黒い靄になったかと思うとすぅっと彼の体に吸い込まれていた。
 それと同時に褐色だった肌色も白くなっていく。

 しばらくして開かれた瞳は、金色ではなく穏やかに澄んだ青。

「エル……よかった、元に戻れたのね」
 
 私は安堵の溜息をもらした。

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