一匹狼の同僚が私とご飯を食べるのは
 すりガラスで仕切られたミーティングスペースのテーブルの向かいで、花梨ちゃんがクロワッサンサンドを頬張る。
 小さな口を一生懸命動かす姿も、小動物みたい。 
 片手ほどもないクロワッサンひとつが、花梨ちゃんの「ちょうどいい」量なんだ。
 そこまで思って、軽く打ちのめされる。
 アイスティーのペットボトルにストローを差し、ちびちびとのんだ花梨ちゃんが「そう言えば」と顔を上げた。

「今日、新しいひとが来たんですよ」
「新しいひと? 新人……は先週入ったっけ」

 つぶやくと、花梨ちゃんが「新入社員じゃなくて」と大げさに被りを振った。

「転職組ですよ。二十六歳だから、陽彩さんと同い年ですよね。大日設計から来たんですって。物好きですよね」
「ふうん」

 やっぱり、これっぽっちじゃ満腹にならないなぁ。
 肩を落として小さなお弁当の蓋を閉めると、花梨ちゃんが「聞いてます?」と口を尖らせた。

「無愛想でしたけど、イケメンでしたよ。午後、営業部にも挨拶に行くそうです」


 
「――あとは()(じろ)。……おい、目白。おひよ、おひよさーん」
「はいっ!」

 大きめの声で営業第二グループの()(ぞえ)部長に返事したとたん、ぐうぅ……とお腹が鳴った。
 グループ員の目がいっせいに私のほうに向いた。
 恥ずかしさのあまり、私は顔の前で手をひらひらさせる。皆さん、見ないでください!

「失礼しました。こっ、これは消化の音ですしお昼は食べたところなのでお気になさらず!」

 嘘です。あんな小さいお弁当じゃぜんぜん足りなくて、お腹がもっと寄越せと脅してきてるんです。
 なんてこと、言えるわけもない。

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