目が覚めたら、ロンドンでした。
ホームズはそれを胸に押し当て、声を詰まらせた。
「何が探偵だ……好きな女ひとり、守れずに……」
彼の頭の中に、美月の笑顔が次々と蘇る。
紅茶を入れる仕草。
頬を染めて怒る顔。
そして――最後に見せた、あの涙混じりの微笑み。
“ホームズ、あなたを愛してる”
その言葉が、心の奥でこだまする。
ホームズの頬を伝う涙が、布を濡らした。
汽車の音が、悲しみを煽るように轟き続けている。
――そのときだった。