あいの輪廻
おかえり
「ッ………げほ、っ………ねえ、ちゃ……」
「っ、ハルキ……!?」
暫くして、ハルキは帰ってきた。
喉元に、少し痣をつけて。
「くっ、首の痣……っ、どうしたの、それ…?」
「知らなくて、いい゙から、……っ、」
咳き込みながらハルキは近寄るな、と言うように私を拒んだ。
こんな時にも、思春期か。
よく見ると、痣以外にも
軽い擦り傷などがあった。
「ユイトは……、先に行っ、た、から……」
「っ、ほんと……?!」
もう、居ない。
あの恐ろしい男は、今、私の近くにいない。
居ない。
なら、大丈夫………?
だったら、今、私のことよりも
「ハルキ、ちょっとこっち来て」
「ッ、はぁ゙、?なん、で……げほ、っ」
「何でも何もない、咳してるでしょ、」
ハルキの腕を引っ張って、リビングに行く。
この家のこと、何も知らないはずなのに
私は何故か医療キットの入っている場所が分かっていた。
医療キットから、消毒液と絆創膏を取り出す。
咳をしているのは、多分風邪ではないから何も出来ない。
でも、擦り傷なら、私が何かをすることはできる。
「ほら、ハルキ。擦りむいてるところ、出して。」
「はぁ゛?なんで……」
「なんで、じゃない、早く。」
ハルキは渋々、と言った様子で腕を差し出す。
肘の当たりが擦りむけていて、血が滲んでいた。
消毒液を綿に染み込ませ、ハルキの擦り傷に当てる。
傷に染みて痛いのか、ハルキは顔を歪めた。
「ッ……、」
「痛いかもだけど、我慢して」
消毒した後は、すぐに絆創膏を貼った。
これで簡単な怪我は大丈夫だろう。
首の痣も、何とかしてあげたいけど……
痣に為す術はないよね。
「………何が目的?」
「……ぇ?」
ハルキは、私の目を見ながら呟く。
……目的って言ったって……怪我を治す以外に、何があるんだ。
「…ハルキは、私が怖がってたから、ユイ、トと、私を離してくれたんでしょ?」
ハルキは、優しい。
多分、誰にでも。
私のことは多分嫌いなんだと思う。
でも、そんな人にでも
この人は、手を差し出してくれるのだろう。
そんな彼に、下心なんか、もって良い訳がない。
「ハルキは、私を気遣ってくれた。なら、私もハルキの為に何かをするのが、礼儀でしょ?」
「っ、…!そんなの…」
「……それに。私のこと、庇ってくれてたんでしょ?……かっこよかったよ」
「なっ………はぁ!?」
ハルキは、ぶわっ、と顔を赤くした。
「顔真っ赤だよ?……大丈夫?熱?」
「っち、ちが…っ!違うからっ!!」
私は、ハルキの顔色を見ようと、彼に近付く。
そんな私から逃れるように、ハルキは顔を隠しながら後ずさった。
……本当大丈夫なのだろうか。
「やっぱ、なんかあるでしょ。…体温計ってみて」
「だッ、だから、なん…っでも、ねぇ、からっ!」
そこまで言うなら…、と、私はハルキから離れた。
熱でもあったら、どうしよう。
そう、心配していたら。
急にハルキは、私の頬に、手を添えた。
「…?……は、ハルキ?」
「……」
ハルキは無言のまま、動かない。
その手には、妙に熱が籠もっている気がした。
「……こんなに突き放してんのに…リンはさぁ…」
そこまで言うと、ハルキは私の顔を覗き込む。
その目には、何かドロドロとした感情が渦巻いているようで。
……ユイトを、彷彿とさせた。
「…優しいんだね………♡」
ピコンッ!
「……え」
もう二度と、聞きたくなかった音がした。
ピコンッ!ピコンッ!ピコンッ!ピコンッ!
……聞かなきゃ、クリアは出来ないのだけど。
ピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッピコンッ!
《 好感度が上がったよ♡ 【ハルキ】60 % 》
…………あれ?
……ユイトみたいに、おかしい上がり方じゃ……ない?
………今回は、上がり方が……マトモ?
…なら
HAPPY ENDを、 …迎えられる……!?
私はこの時、大事なことを忘れていた。
「……………♡」
《 ¿ 好感度が上がったよ♡ ¿ 【ハルキ】60 % ¿ 》
《コゥ■度ガァがッ■ョ♡??¿¿¿¿【■ㇽキ】■■ %》
ピコンッ♡
《 好感度が上がったよ♡ 【ハルキ】100 % 》
彼等が、私を騙せる “ トクベツ ”なゲームだ、ということを。