離婚を切りだしたら無口な旦那様がしゃべるようになりました
 フィリクスは相変わらず無表情で微動だにしない。いつもと変わらない彼の姿だ。
 しばらく彼はアリシアを見つめたまま沈黙し、ふいっと目をそらしたかと思うとようやく口を開いた。

「離婚はしない」

 無表情のまま立ち上がったフィリクスは、それ以上何も言わず、背を向けて部屋を出ていった。
 残されたアリシアは、目を見開いたまま俯き、スカートの裾をぎゅっと握りしめた。

 涙が滲む。でも、泣くわけにはいかない。
 この日のために、ずっと準備をしてきたのだから。

 アリシアは静かに顔を上げ、決意を胸に立ち上がる。
 夫と離婚するために。

 しかし皮肉なことに、この日から彼女の人生は少しずつ変わり始める。
 そしてその変化は、想像を遥かに超えるものとなるのだった。

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