共演した推しが超プロ意識高めアイドルでした

ep6

廊下。
撮影を終えたさえは、信じられないほど軽やかな足取りでスキップしていた。

「ふんふんふ〜ん♪」

頬はゆるみっぱなし。目はキラッキラ。
推しと“惑星トーク”ができた余韻で、もはや重力を忘れていた。

「姉さん、ご機嫌で何よりです。」

突然後ろから声をかけられて、さえはピタッと止まる。
「ら、らいとくん!」

振り返ると、らいとが腕を組んでニヤニヤしていた。

「惑星大好き作戦は、上手くいった様子ですなぁ。」
「そうなの!なんとマナトくんと話せちゃいました。しかも一言とかじゃないよ?いっぱい話せたの!」

満面の笑みで両手を握りしめるさえ。
「一夜漬けで勉強した甲斐あったわ。本当にありがとね。」
「どういたしまして。」

らいとは少し誇らしげに微笑む。
(いや、想像以上に単純で助かるな……)

「それにしても、もしかしてなんだけど、マナトくんって天然なの?」
「お、それに気づいた?ということは、かなり仲良くなった感じ?」

「え、でも推してる時はリーダーだし、しっかりしてるイメージだったんだけど。」

らいとは吹き出した。
「あれは表向きのマナト。あのキャラ作るの、結構大変なんだよ。
 本当はさ――現場に来るのに反対側の電車乗っちゃうし、自転車どこに置いたか忘れるし、おばあちゃん助けて仕事のこと忘れるし。」

「……なにその天然エピソードのバーゲンセール。」
さえは半笑いになった。
「ちょっと蛙化なんだけど。」
「は?」
「うそうそ。ギャップ萌えだわ。」

口では軽く言いながらも、心の中では完全にノックアウト。

(しっかり者のリーダーで、高身長の昭和系イケメンが、実は惑星好きで超ど天然……って、完璧すぎない?)

「いいね。ますます好きになりそう。」
「なら良かったです。」

らいとは穏やかに微笑む。
だがその笑顔の奥には、どこか計算めいた影が見えた。

「――あ!やば、現場戻らなきゃ!じゃあまたね、らいとくん!」

スキップしながら去っていくさえを見送り、らいとは小さく笑う。

「いいぞ、俺の計画、上手くいってる。この調子だ。」

照明の光が彼の横顔をかすめる。
その笑みは――まるで次の展開を知っている脚本家のようだった。
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