用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
胸元を押さえ苦しむアランの体を、さっきの黒いモヤがまとわりつくように覆っていた。
顔色が青くなっていき、アランはとうとう床に倒れ込んでしまう。
誰かが「早く医者を!」と叫ぶ声が遠くで聞こえる。辺りが騒然とするも、エレインには聞こえていない。
(どうしよう、どうしよう! 私を庇ったせいで殿下が……!)
「きみが、無事で……、よかった……」
「殿下! 殿下!」
アランのそばに膝をつき、伸ばされた手を両手で握りしめることしかできない。
今にも消え入りそうな弱弱しさに、恐怖で押しつぶされそうになる。
「また殺し損ねたじゃない! なんで、そんな女を庇うのよ! どいつもこいつも、エレインエレインエレインってうるさいんだから! ……うっ」
シェリーの体がよろめき、膝をつく。
顔面蒼白で胸を押さえ、苦しみで顔が歪む。
その姿を見て、さっきの黒い精霊はシェリーが自分を襲わせようとしたものだと直感で理解する。
(これが、害する力……)
「シェリーお願い、やめて! あなたが殺したいのは殿下じゃなくて私でしょう! 殿下を助けて!」
しかし、そう懇願したエレインは言葉を失う。
彼女の周りに、さっきと同じ黒い塊がみるみる集まっていくではないか。
「シェリー! それ以上力を使ってはダメ!」
(いや……、このままじゃ、殿下が……!)
「うるさいうるさいうるさい! 死ねえぇ――っ!」
「やめてー!」
迫りくる黒い塊からアランを庇うべく、エレインは彼の体に覆いかぶさるように抱きついた。
(ふわふわさん! お願い! 助けて!)
――パァァッ!
そう強く願った瞬間、光が二人を包み込む。
ふんわりとした温かさを感じて目を開けると、黒い物体は消え失せて、いつもの精霊たちが二人の周りを漂っていた。
(この感じ……)
疲れたり怪我をしたりしたエレインを、精霊たちが癒してくれるときの温もりと同じだった。
(お願い、殿下の苦しみを取り除いて!)
どれくらいそうしていただろうか、アランの腕がピクリと動き、エレインの肩に触れた。
(殿下?)
重たい体をどうにか起こすと、血色が戻ったアランの顔が見え、呼吸も落ち着いているのが分かり安堵の息が漏れる。
「エレイン……」
アランの眼が開かれて、美しい碧色がエレインを見つめる。上体を起こした彼は、自分の体を確認するように手のひらを開閉し、驚きに目を見開く。
「まさ、か……治癒の力を使ったのか……? 指輪もないのに……」
アランを救えた安堵と喜びからか、エレインは声を出すこともできなくて、代わりに微笑み返す。その拍子に、目尻から涙が溢れて頬を伝っていった。
(殿下が無事で……よかった……)
どこかふわふわとした浮遊感に誘われるまま、エレインは目を閉じる。
「エレイン!」
アランの焦った声を最後に、エレインの意識は暗闇へと吸い込まれていった。
顔色が青くなっていき、アランはとうとう床に倒れ込んでしまう。
誰かが「早く医者を!」と叫ぶ声が遠くで聞こえる。辺りが騒然とするも、エレインには聞こえていない。
(どうしよう、どうしよう! 私を庇ったせいで殿下が……!)
「きみが、無事で……、よかった……」
「殿下! 殿下!」
アランのそばに膝をつき、伸ばされた手を両手で握りしめることしかできない。
今にも消え入りそうな弱弱しさに、恐怖で押しつぶされそうになる。
「また殺し損ねたじゃない! なんで、そんな女を庇うのよ! どいつもこいつも、エレインエレインエレインってうるさいんだから! ……うっ」
シェリーの体がよろめき、膝をつく。
顔面蒼白で胸を押さえ、苦しみで顔が歪む。
その姿を見て、さっきの黒い精霊はシェリーが自分を襲わせようとしたものだと直感で理解する。
(これが、害する力……)
「シェリーお願い、やめて! あなたが殺したいのは殿下じゃなくて私でしょう! 殿下を助けて!」
しかし、そう懇願したエレインは言葉を失う。
彼女の周りに、さっきと同じ黒い塊がみるみる集まっていくではないか。
「シェリー! それ以上力を使ってはダメ!」
(いや……、このままじゃ、殿下が……!)
「うるさいうるさいうるさい! 死ねえぇ――っ!」
「やめてー!」
迫りくる黒い塊からアランを庇うべく、エレインは彼の体に覆いかぶさるように抱きついた。
(ふわふわさん! お願い! 助けて!)
――パァァッ!
そう強く願った瞬間、光が二人を包み込む。
ふんわりとした温かさを感じて目を開けると、黒い物体は消え失せて、いつもの精霊たちが二人の周りを漂っていた。
(この感じ……)
疲れたり怪我をしたりしたエレインを、精霊たちが癒してくれるときの温もりと同じだった。
(お願い、殿下の苦しみを取り除いて!)
どれくらいそうしていただろうか、アランの腕がピクリと動き、エレインの肩に触れた。
(殿下?)
重たい体をどうにか起こすと、血色が戻ったアランの顔が見え、呼吸も落ち着いているのが分かり安堵の息が漏れる。
「エレイン……」
アランの眼が開かれて、美しい碧色がエレインを見つめる。上体を起こした彼は、自分の体を確認するように手のひらを開閉し、驚きに目を見開く。
「まさ、か……治癒の力を使ったのか……? 指輪もないのに……」
アランを救えた安堵と喜びからか、エレインは声を出すこともできなくて、代わりに微笑み返す。その拍子に、目尻から涙が溢れて頬を伝っていった。
(殿下が無事で……よかった……)
どこかふわふわとした浮遊感に誘われるまま、エレインは目を閉じる。
「エレイン!」
アランの焦った声を最後に、エレインの意識は暗闇へと吸い込まれていった。