用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
「昨晩は、よく眠れたのでしょうか」
「うん、きみがくれたハーブティにはちみつを入れて飲ませたら、朝までぐっすり寝ていたと報告を受けているよ」
「それはよかったです」
 フォントネルの屋敷から持ってきた自家用ハーブティを、昨日アランに渡してテオに飲ませてもらうよう頼んでおいたのだ。
「睡眠さえ改善すれば、あの癇癪もよくなると思ったんだけどね……」
「あぁなってしまったのは、ご両親が亡くなられてからなんですよね」
 テオは、アランの兄でありこの国の第二王子夫妻の忘れ形見だった。大雨による被災地へ慰労に訪れる途中の道で土砂崩れに合い、この世を去ってしまったのだ。
(三歳で突然ご両親を失うなんて……心の傷は計り知れないでしょうね)
「そう、兄夫婦が亡くなって半年になる。テオはもうすぐ四歳だからこうなる前には歩けていたし、言葉を話すのもとても早くて達者なくらいで……、それにとてもよく笑う子だったんだ。それが……」
 ――兄夫婦が事故で亡くなってから、まるで赤子に逆戻りしてしまったかのように喋りもしなければ歩かなくなってしまったんだ。
 アランから聞いていた通り、今のテオは座り込み、喋れない赤ちゃんのような態度を取っていた。自分で食事を取ろうとせず、イヤイヤと駄々をこね、喋らずものを投げて癇癪を起こす。力がある分、赤ちゃんよりも手がかかるだろう。
 世話係は憔悴しきっている様子だ。
 現にアランの話では、すでに何人もの世話係が「手に負えません」と辞めていってしまったらしい。
「どうかな、きみのハーブであの子は前みたく笑うようになるだろうか」
「ハーブだけでは、無理でしょうね……」
「じゃぁ、どうすれば?」
「そうですね、とりあえず、あの世話係の方に今すぐ休暇を与えてください」
「そうしたいのは山々だが、代わりの者を見つけるのが難しいんだ」
「大丈夫です、殿下」
 不安でいっぱいのアランを安心させようと、エレインは穏やかな笑みを顔に浮かべる。
 そして、なにが大丈夫なのかわからないといった顔のアランを見上げ、「代わりの者はここにおりますから」と自分で自分を指さしたのだった。
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