用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 青い大きな瞳はとても美しいが、どこか焦点が合っていないような、無気力な眼差しをしている。
 その表情はとても三歳の子とは思えなかった。
 エレインは、警戒されないように笑みを浮かべて反応を待ったが、すぐにふいと顔を逸らされてしまう。
「申し訳ないんだけど、俺は公務があるから後を頼んでもいい? なにか困ったことがあれば、控えている侍女に言付けて」
「かしこまりました」
 帰国したばかりで仕事が溜まっているのだろう、エレインの返事を聞いたアランは、テオにハグとキスで挨拶をして部屋から出ていった。
「殿下はテオドールさまをとても大切に思っていらっしゃいますね」
「……」
 テオはエレインの言葉には反応を示さず、ぼうっと積み木を眺めている。なにかを作るでもなく、ころころと転がしては拾っての繰り返し。
(とても楽しんでいるようには見えないわ……)
 両親のいない寂しさを紛らわしているのだろうか。その姿からは悲しみが見て取れてエレインの胸が締め付けられた。
 本当なら、楽しいことばかりなはずの年ごろだと言うのに。
 しばらく見守っていると、放り投げた積み木が他の積み木に当たって、エレインの方へと転がってきた。
 エレインがそれを手に取ると、テオの方へと差し出した。
 しかし、テオはエレインの手を叩くように振り払ったため、手に乗っていた積み木はあらぬ方へと飛んでいった。
 テオが、チラッとこちらを伺うのを、エレインは見逃さなかった。
「すごい! 積み木があんなに遠くに飛んでいきましたよ、テオドールさま」
 少し大げさに驚いて見せると、テオはエレインの顔を振り返り、まじまじと見つめた。
 くりくりの眼に見つめられて、エレインは心臓がどきどきした。
(か、かわぁ……)
 テオの瞳に見惚れつつ、エレインはにっこりと微笑んで見せる。
 怒ってもいないし、悲しんでもいない、と彼に知らせるために。
「いっぱい飛びましたね」
「……あう」
「わ、お喋りも上手にできるんですね。エレインとお話してくださってとっても嬉しいです」
 喋ったことを褒めると、テオは恥ずかしいのか俯いてしまう。
 それきりまた喋らなくなったテオに、エレインは時おり話しかけながらずっと側で見守っていた。
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