用済みだと捨てたのはあなたです、どうかおかまいなく~隣国で王子たちに愛されて私は幸せです~
 彼は、エレインの代わりに雇い、ハーブ事業を任せている者だ。
「王太子殿下、先日の報告書は御覧いただけましたでしょうか」
「んあ? 報告書など読む暇があると思うのか? なぁ、シェリー」
 ダミアンは腕の中でうっとりと自分に寄り添うシェリーの頭に唇を寄せる。
「ふふふ、ダミアンさまは王太子殿下ですもの。いつだってお忙しいに決まってますわ」
 傍から見れば、女とただお茶をすすっているだけの暇人にしか見えないのだが。
 部下は内心呆れながらも、顔に出さないようにぐっと口を結ぶ。
「急ぎなら今ここで用件を言え」
「ハーブの生産量がここ一週間ほどで急激に落ち込んでおり、製品の出荷に影響が出ている状況です。農夫からの話では雨が降らないせいでハーブが枯れ始めているとのことです」
「そんなの、水を撒けばいいだろう」
「水を撒くにも人手が足りません」
「なら人を増やせ。そんなこともわからないのかお前は」
「人を増やすには予算が足りないのです」
「足りない分は国庫から出せばいい」
「しかし、」
「多少金をかけたってあの()は高値であっという間に買い手がつくんだから、問題ない。もう下がれ」
 まだなにか言いたそうな部下を手で追い払い、カップを口に運ぶ。
(頭の回るやつを雇ったのに、こうも使えないとはな)
 冷めた紅茶は、飲み込んだ後も口の中に渋みが残り、ダミアンは顔を顰めた。
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