この恋、史上最凶につき。
第十七話 深夜の集会
テスト初日の夜。
私が家でノートをまとめている頃――スマホが震えた。
《雪菜。今から少し出てくる。黒焔の集会。
……心配すんな、すぐ戻る》
短いメッセージ。でも、行間が熱い。
(そういえば、黒焔の集まりって……大事なんだよね)
時雨くんは総長。
彼の背中にはたくさんの仲間がついてる。
少し不安になってスマホを握りしめていると、
またすぐに通知が届いた。
《雪菜は寝る前に連絡しろ。
俺が返す》
(……寝る前まで見張ってる気なの?)
でも、胸が温かい。
なんでこんなに嬉しくなるんだろう。
一方その頃――黒焔の溜まり場。
集会を仕切る時雨くんの声は、昼間の教室とは別物だった。
「最近、うちの縄張りにちょっかい出してくる奴らがいる。
……で、もう一つ。俺に手ェ出させるような真似をしたバカがいる」
低く響く声。
仲間たちがざわりと周囲を見回す。
「総長、それって……」
「学校のやつか?」
時雨は煙草を指で弄びながら、冷たく笑った。
「雪菜に絡んできた女子の話だよ」
空気が一瞬止まる。
「……あー。あの嫌がらせしてたやつ?」
「たぶん本人は軽い気持ちだったんだろうけどな」
目が笑っていない。
「あいつら、雪菜のこと泣かせた。
“俺の”前では泣かねぇって決めてんのに」
仲間たちの背筋が揃って震える。
「総長、どう処理する?」
「あいつらが雪菜に二度と近づかないようにする。
黒焔の名前使ってもいい。むしろ使え」
言い切る声が、夜気を切り裂いた。
「……雪菜、泣かせたやつ全員、俺が許さねぇ。
それが、総長としてじゃなく――彼氏候補としての仕事だ」
「候補って、もうほぼ本命じゃん……」
「うるせぇ。言わせんな」
けど、その横顔は隠しきれないほど甘かった。
「雪菜が俺以外のやつに怯えるとか、ありえねぇ。
守るのは、全部俺の役目だ」
家でスマホを手にしていた私は、
ふいに画面が光って胸が跳ねる。
《雪菜。終わった》
短くて無骨なのに、安心が流れ込んでくる。
《もう他の奴らが、お前に何かしてくることはねぇよ》
(え……どういう意味?)
打とうとした指を、次の通知がすぐ止めた。
《雪菜の涙は、俺の前だけでよくね?
……俺以外に見せんな》
画面の文字が、心臓に直接触れてきた。
(なんでそんなこと……)
理由なんて、わかってる。
時雨くんはいつも、
“守る”よりも、“独占”の色のほうが強い。
《もう寝ていい。
……寝顔見れねぇの、普通にムカつくけど》
最後の一行で、思わず笑ってしまう。
(寝顔、見たいんだ……)
胸がふわりと温かくなり、私は布団に潜った。
時雨くんが、どんな顔でメッセージを送ってるのか想像すると――
眠気より先に、頬が熱くなる。