この恋、史上最凶につき。
第二十二話 彼女宣言
黒焔のアジトは、いつもの騒がしさだった。
バイクの音、工具の音、
メンバーの笑い声。
その中へ、私は時雨くんと並んで入っていった。
すると——
「おっ、総長来た……って、雪菜ちゃんも?」
「……あれ? 二人、なんか雰囲気違くね?」
ざわ……っと空気が変わる。
そりゃそうだ。
だって私は、時雨くんと“正式に”付き合い始めたばかり。
手は繋いでない。
でも距離がいつもより近い。
時雨くんの目つきも、いつも以上に柔らかい。
それだけで黒焔は察したらしい。
「……総長、まさか……」
「言っとくけど、そう簡単に総長に女ができるわけねーべ?」
「いや、でもなんか……空気が……」
「うるせぇ」
時雨くんが短く言い放った。
その声だけで、全員の背筋が伸びる。
「大事な話がある」
アジトの中央に出て、
私の手首をそっと引いた。
みんなの視線が一斉に集まる。
「……雪菜」
名前を呼ばれた瞬間、
時雨くんは迷いなく私の方へ腕を回し、
腰を抱き寄せた。
「——今日から俺の彼女だ」
しん……と静まり返った。
「……は?」
「え、マジ?」
「総長……とうとう……!」
「いや、だってあの伊達家の……?」
「雪菜ちゃん可愛いし、そりゃ総長も落ち……」
「おい」
時雨くんが殺気を飛ばす。
言った奴は即座に黙った。
目だけで黙らせる総長……ほんとすごい。
「雪菜に変な目向けたら……全員まとめて潰すから」
さらっと言ったけど、
黒焔全員、本気で震えてた。
「総長……俺ら、誰もしねぇよ! そんな怖い顔すんな!」
「そうだよ!雪菜ちゃん、前から仲間だし!」
「祝うって意味でなんかやるか?」
「いや……浮かれすぎて総長に殴られんのは勘弁……」
わちゃわちゃし始めたメンバーを横目に、
時雨くんは私の頭を撫でた。
「雪菜。こいつらがなんか言っても気にすんな。
……俺が全部守るから」
「そんな、時雨くん……」
「彼女なんだから、当たり前だろ」
その“彼女”という言葉に、胸がじんわり熱くなる。
黒焔の視線が一斉にこっちに向かうけど、
時雨くんは隠す気ゼロで堂々としていた。
「総長……顔がデレてる……」
「黙れ」
「ひえっ……」
怒りながらも、
私の腰だけはしっかり抱いたまま離さない。
黒焔のメンバーはニヤニヤしつつ、
アジトはいつもより少しだけ温かい空気に包まれた。
――私は、この場所でもちゃんと“時雨くんの隣”にいる。
その事実が、心の奥で光っていた。