魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
私は重たくなった口を無理矢理開く。
今を逃すと、聞けなくなる気がして。

「じゃあ、どうして誰も転魔してないの?」

エイイチロウは無邪気な笑顔を浮かべる。

「決まってるじゃないですか。
誰も望まなかったからですよ。
ユリア様がたまたま恋人が欲しいって言われたのでこうなってますけど。
家族を助けて欲しいとか、お金が欲しいとか。
そういう願いだったら?」

「リリーは?」

イタリアでは、リリーという名の恋人が居たはずだ。

エイイチロウは、いたずらっ子のように片目を閉じる。

「確か、売春宿に売られる直前に浚われて陵辱された処女の話は、聞かないって言われてませんでした?」

……うっ。
言いました、けど。

やっぱり、その話ってリリーのことなのかしら。

「ま、でもいいです。
ホストクラブは夢を叶えるところですからね。
っていっても、さすがに魔王様の話になるとついつい口調が改まっちゃうんですけど」

言って、エイイチロウはぺろりと舌を出す。

「しばらくは楽しく過ごされていましたよ。
でも、彼女、どうしても浚われる前に婚約者だった男のことが忘れられなくて。
ピサの斜塔から飛び降りて亡くなってしまいました」

それは、昨日見たテレビドラマの内容を伝えるかの如く軽い口調で。
エイイチロウは言うと、猫のようにぐいと伸びをした。

考え込んでいる私のことなんて、瞳の端にも止まらないかのように。
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