魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
とはいえ、私もこの状況でちょっと別のことが気にはなっていた。

このビル、弓下ビルって名前がついていたのよね……。

不穏な空気を纏う私たちを乗せたエレベーターは、気負いもなくするすると上に上がっていく。

「ねぇ、キョウ。
私も弾が当たっても死なないの?」

キョウは困った顔で私を見た。

「当たったら死ぬに決まってるでしょう。
頼むからそんな物騒なこと言わないで」

優しく言うと、瞳を煌かせて甘いキスを落とす。

キスが終わる頃、申し合わせたかのようにエレベーターのドアが開いた。

……っていうかさ。
だったら、頼むからそんな物騒なところに私を連れてくるの、やめていただけませんでしょうか?


とはいえ。
いまさら引き返せるわけもなく。

ドアが開いた瞬間、二人の男たちから銃口を向けられた私たちだった。

「ワンパターンは嫌いなんだけどな。
馬鹿の一つ覚えみたいで」

キョウは軽口を叩きながら、指で銃の形を作って二人の方向に向けた。
ほんの一秒足らずで、拳銃が、液体と化してどろりと溶けていく。

「ぎいぁああああっ」

目の当たりにした超常現象に、大の大人、しかもちんぴら風情の男どもが狂ったような悲鳴をあげて慄く様はちょっと面白い。

……なんて思ってしまう当たり、私も少々壊れかけているのかもしれないんだけれど。

「もしかして、目だけで人が殺せちゃうタイプ?」

私はキョウに問う。
魔王様って、案外漫画チックな存在だったのね、という想いが私にそんな言葉を吐かせたのだ。

キョウは私を見て、艶やかな笑みを浮かべる。

「目だけで、ユリアをイかせちゃうタイプ☆」


……き、聞くんじゃなかった。
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