魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「ねぇ、キョウ。
寒くない?」

彼が起き上がったことで、掛け布団の端が捲れた私は身震いをした。
服を着てないことにも確かに問題はあるが、それにしても寒い。

キョウは答えずエアコンのリモコンのスイッチを入れる。

そうだった。
彼には寒さなんてわからない。

カーテンの向こうを覗いて、そして微笑を浮かべた。

「雪がちらついてる。
そのせいじゃない?」

「雪?」

私は思わず身体を起こし、カーテンの隙間から外を見た。

積もるとは思えないほど薄い白いものが、あたり一面ちらついている。

雪って、どうしてこうも人の心を惹きつけるのかしら。
私は冷たい窓ガラスに額を押し付けて、雪を眺めていた。

キョウが投げっぱなしの自分のパジャマで私を包む。

「積もるかな?」

積もるとは思えないのに、そう呟いてしまう自分に思わず苦笑する。

「積もって欲しいの?」

「綺麗じゃん。一面が平等に真っ白に染まるの、大好きなんだ」

そうか。
これ、キョウと見る初雪なんだ。

今まで一度も雪に対する見解なんて語り合ったことは無い。

「なぁんだ。ユリアって寒いの嫌いなのかと思ってた。今からでも北極圏に連れて行ってあげようか?」

「……ソレは嫌」

裸でそんなところに行ったら、多分凍死しますけど。

キョウはくすりと笑う。

「俺のお姫様は、何処までも我侭で困るね」

……その台詞、そっくりそのまま返しましょうか?

「ブランチ作ってあげるから、気がすんだらキッチンにおいで」

いつまでも、いつまでも。
飽きずに雪を眺めている私の背中に、そんな声が聞こえてきた。
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