魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「……あなたの、お名前は?」

とりあえず、酷く動揺している私は名前なんかを聞いてみる。

ふわり、と。
まるで花が咲いたかのような柔らかい笑みをその人は零した。

「名前なんて、名乗っても誰も信じてくれないから名乗らないことにしたの。
好きに呼んでくれていいよ」

「好きにって言われても」

困る。
綺麗過ぎて、生憎だが性別さえ分からない。

「じゃあ、神様って呼んで」

まるで、疑いもないようにそう言うと、相変わらず零れるような甘い笑みを口許に浮かべている。

……か、神様ですか?

いつか似たような経験をしたことがなかったかしらと私は記憶を辿ってみるが、前頭葉の痛みに邪魔をされた。

「ほら、その反応。
失礼じゃない?
神様の存在が信じられないなら、毎年神社に御参りしてんじゃねぇよって話だよね」

だよね、なんて優しく語り掛けられてもなんていったら良いのかまるで分からない。

「あの、どこから来たんですか?
何のために?」

うろたえている私とは違い、その自称神様は優しい笑みを口許に携えたまま穏やかに私を見下ろしている。

「そうそう、リリー。聞いてくれる?
神様はそうそう簡単に席を離れちゃいけないんだ。
だって、神様だからね。
それなのにさ、アスモデウス……君はキョウって呼んでるんだっけ?……が、しつこくてさ。どうしてもリリーのところに行きたいっていうから。
わざわざこうして出向いてあげたっていうわけ。
お分かり?」

どうやらお喋り好きなようで、私の理解度など微塵も気にする様子もなくとうとうと話し続けている。
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