魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
25.ラスベガスで見た夢は
「大丈夫、顔、赤いけど」

ジャックが心配そうに覗き込んでくる。
その、どこぞの皇太子を思わせるような綺麗なルックスに、私はますます赤くなる。

「うん、大丈夫」

どうしよう。
どうしてこんな美形青年が、私のうちに居るのかしら。

私の脳みそは無意識のうちに、そんな考えても仕方のないことにまで思いを馳せていた。

「そう。
無理しないでね」

心底心配そうに、ジャックが言う。
儚い声が優しく揺れて、耳に心地良い。

「うん、ありがとう」

二人で、黙ってコーヒーを飲む。
なんて幸せな時間なのかしら。

もう、記憶喪失も、綾香の件も、ジャックが消えることも。
何もかもなくなって、今が全てだったらいいのに。

そう思えるくらい、穏やかな時間が部屋を満たしていく。

「ねぇ、ラスベガスってどんなところ?」

何か話したくて、私は無難だと思われる話題を選ぶ。
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