魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
26.ホストクラブとお酒と夢と
「百合亜」

ホストクラブの前でジャックと一緒に立っていると、タクシーから笑麗奈と綾香が一緒に降りてきた。

「彼が、エイイチロウ?」

と。
私と並んで談笑しているジャックを指す。

「ううん、違うわ」

綾香の記憶は綺麗に消してあるらしく、ジャックを見ても【吸血鬼だー】なんて騒ぐこともなかった。

一瞬、ジャックの瞳が切なそうに煌いたのを私は見逃さない。
……私が忘れている「誰かさん」も、私をこんな風に切なく見つめているのかと想像するだけで、胸の奥がきりきりと痛んでくる。

だけど。
仕方が無いの。

ゴメンね、後少しだから。
待っていて?

心の中で正体不明の「誰かさん」に謝ってから、顔をあげて口角もついでに上げてみせる。


「でも、彼もここのホストよ。
さぁ、中に入りましょう」

私は二人を促して、二度目のホストクラブへと、足を踏み入れた。
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