魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
そして。

そして、何より。
キョウが人間界に来れる様になるために、どれほどの苦労を重ねてきたのかということも。

私は嫌になるくらいきちんと、覚えていた。
それなのに……。
私ったら、一体誰にときめいたって言うの?
いくら記憶が無かったって言ったって……。


さすがに申し訳なくて。

だから。
どんな顔をすればいいのか、分からなくて動けない。

何も知らないふりなんて、出来ないし。
知った私は、どうすれば良いの?

こういう時、学校で習ったことも、今までの人生で習得したことも、本で読んだことも、映画やドラマで見たことも。
何一つ、私の役には立ちはしない。


なんて、頭の中は真面目な悩みでいっぱいなのに。


「どうしても、顔が見れないって言うんだったら、ほら。
目隠ししたままヤってみる?」

と。
そんなの全て軽くリセットしてくれるような、ふざけた提案が優しい声に包まれて頭上から降ってきた。

カチン、と。
頭の中で、金属音が鳴ったような不快感に襲われる。

「あのね、今はそういう話をしている場合じゃないんだって!」

考えるより前に、キョウの顔を見て怒っている私がいた。

「じゃあ、どういう話をすれば良い?」

キョウは、相変わらず(変わっていたら怖いけど)私の持つボキャブラリー全てを総動員しても足りないような素敵なルックスで私を見つめると、所有物であることを確認するかのように、簡単に唇を奪う。

深く、熱く、唾液が唇から溢れるほど執拗に。


……こ、これじゃどんな話だって出来ないじゃない!
  エロ魔王!!


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