魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
雑貨屋さんで、黒猫の小さなぬいぐるみとピストルモチーフのネックレスを手に入れた。

ジャックのお墓もお骨もないから。
その代わり、私の部屋に置いておこうと考えて。

それから、ちょっと悩んだけれど、手芸屋さんに寄ってちょっと高級そうな黒い毛糸と編み針を購入。
マフラーなら、今からでも間に合うわ。

まぁ、寒さを感じない悪魔にマフラーなんて無用の長物ってのは分かっているのだけれど。

いつ帰ってくるのか分からない人をぼんやりと待っていられるほど、呑気ではないので仕方がないじゃない?

それに。
多分、私は自分の手を動かしてみたくなったのだと思う。

私(っていうか正確にはマドンナ・リリーなんだけど)のために、<調伏>に励んだり、料理を覚えたり、フランス語をマスターしようと試みたり、はたまたクリスマス・キャロルを一曲歌いこなしたりしてくれる魔王様の真似をして。


ま、この下手な編み物でそれが補えるかどうかっていう大問題はあるんだけど……ね。


確か、小学生の頃一度マフラーを編んだことがあったのだけれど。
どうやら、そのときの記憶は曖昧なようで私は一度本を買いに出かけなければいけなかった。

それから、本を読みながら編み棒を必死に動かしていく。

終業式に学校に行かないといけなかったりもしたので、実際のところ私がマフラーを編み上げたのは12月24日の夕方だった。



つまり。
12月24日の夕方になっても、キョウはこのマンションには帰ってこなかったっていうことなんだけど……。

私、自分で気づいてないだけで本当はもう、別れちゃってるのかしら?
あの、宝石屋のお姉さんの言うとおりなの……?



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