魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「ユリアちゃん、ありがとう」

ジャックが二人の会話が途絶えたのを見計らって唇を開いた。
相変わらず、儚い笑顔を見せるのね。

本当は近寄って握手くらいしたいけど、キョウに怒られちゃうわ。

「どういたしまして。Be happy.」

幸せにね、と。英語で言う。
日本語ではこっぱずかしくてなかなか口に出せないことも、英語だと言い易い。

「Thank you, good bye and be happy with your husband」

キョウさんと(っていうか、私の夫っていうんだからきっとキョウのことよね?)お幸せに、と言って、ジャックは足音も立てずに教会から出て行った。
そっか。
本物の吸血鬼になったのなら、長い間教会の中に居るのは辛いのかもしれないわね。

細い背中を眺めながら、そんなことを思う。
それから、キョウに視線を戻した。

相変わらず、向こうからこっちに来てくれる気は毛頭ないらしい。先ほどより、幾分か柔らかい瞳で私を見ていた。


「どうしてクリスマスの過ごし方、そんなことにこだわるの?」

「ユリアが恋人が欲しいって言っただろう?恋人らしいことをしてやるのが筋だと思ったまでさ」

歴代のマドンナ・リリーの生まれ変わりの願望をただひたすら叶えてきたという、優しい悪魔が口を開く。

「じゃあ、私がそう言わなかったら付き合わなかったってこと?」

あの時私が、「志望校に合格したい」なんて高校生らしいことをいったら、大学受験まで待っていてくれたのかしら……?
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