魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
負けないわよ、という強い気持ちを込めて。
キョウの瞳と対峙した。

しばらくして。



ふっと。

キョウが小さく笑った。

それは。
親への秘密がばれそうになった子供の、ささやかな抵抗に良く似た、淋しさの篭った笑いだった。

「ユリアには敵わないな。
マドンナ・リリーにそっくりだ」

いやいや。
ユリの花にそっくりとか言われても。

意味、わかんないんですけど。

キョウは自分の中に湧き出てきた『本物』を噛み砕き、自分の言葉で喋りだす。

「リリーも、罪に問われるなんて構わないって笑うんだ。
そんな先のことより、今、アナタに笑って欲しかったって。
笑顔が見たかったって――」


つぅ、と。

涙とは無縁と思われたその。
魔王様の形の良い頬に。

透明な、涙が伝う。


「だから、笑ってって。
自分は今にも消えそうなのに。
俺に笑ってって言うんだぜ?
そんなの、無理に決まってるだろう――。
いつもそうやって。
無茶ばかり言う」

言って。
涙の伝う、その顔で。

キョウは、綺麗なまでに笑って見せた。

マドンナ・リリーもきっと納得したであろう。
それは、それは。

うっとりするほど、優美な笑みを。
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