魔王様!まさかアイツは吸血鬼?【恋人は魔王様‐X'mas Ver.‐】
「違うって。
分かってるでしょ?」

キョウは私の問いかけに

「さぁ?」

と、とぼけたふりを決め込むと、抱き枕でも抱くように私の身体をむぎゅと抱き寄せた。

「とりあえず、さ。
ここにいて」

軽く言った後、耳元に唇を寄せて囁くように続ける。

「せめて、束の間の数年間。
楽しく過ごすことも、許されないの?」

疲れ果てた悪魔が呟くのはきっと、祈りにも似た小さな願い。


私は小さくくすりと笑う。

そうよね。
今日はまだクリスマスなんだから。

一つくらい願いを叶えてもらっても、バチは当たらないわよね?


「分かったわ、キョウ。
もう、私からは転魔の話は切り出さずに、ここで過ごす。
……それで、いい?」

ほんの一瞬。
彼が浮かべて見せたのは、クリスマスの朝、枕元に大きなプレゼントを見つけた瞬間の子供の笑顔に似て。

切ないほど、無邪気な幸せが溢れていた。



だから、触れるだけのキスをして。
手を繋いだまま、眠りについたの。

世界中の皆と、そして私たち二人が。
永遠に続く長い間。

ううん、それが贅沢だって言うなら、神様?
せめて、ほんの少しだけでも。
ささやかな幸福に満ちた時間を共に過ごせますようにと、深く祈りながら。


I wish you a Merry Christmas and a Happy New Year!


Fin.
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