白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
「そのまま城に連行しろ」
「は!」

 ブレイズの言葉に、抑え込んだ騎士たちが父の両脇を抱えて歩き出す。
 父がいくら暴れても、屈強な男たちは身じろぎすらしなかった。

「こんなことをしてどうなるか分かっているんだろうな! 父親をこんな風に見捨てるだなんて!」

 引きずられるように連行されながらも、父は必死に顔だけこちらを向きながら叫んでいた。
 今さらどの口が言うのかしらね。

「……先に私を捨てたのはあなたでしょう」

 金貨一枚の価値すらないと切り捨てたんだもの。
 でもそうね。今の父にも、金貨ほどの価値もない。
 
 さようなら、お父様。
 永遠に会わないことを祈るわ。

「アンリエッタ、お前は!! 離せ離せ離せぇぇぇ!」

 父の叫び声を気にする者はどこにもいなかった。

 子どもの頃から父の背は、恐ろしく高いものだと思って生きてきた。
 永遠に超えられず、そしてその陰で生きて行くしかないと。

 だけど……。そう思い込んでいたのは、ただ抑圧されてきたからだと今なら分かる。
 私はただ小さく見える父の背をずっと見ていた。
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