嘘と欲求
前を歩く伊織が、学校の敷地内から出た。今日の情報収集も終わりだ。翔真はポケットにしまっているスマホを触ろうとして、ふとある異変に気づいた。思わず立ち止まってしまう。急に静止した翔真の脇を通り過ぎて行く生徒が、不思議そうな顔で翔真を一瞥する。
翔真は一点を見つめてごくりと唾を飲んだ。翔真を追い抜いていった生徒は、伊織の帰り道の方向へ曲がった。しかし当の伊織は、いつもとは逆の道を進んでいた。どこへ行くつもりなのだろう。
突然のイレギュラーに動作が一時停止してしまったが、気を取り直した翔真はスマホを触るのを中断し、徐に足を動かした。なぜか胸の鼓動が高鳴っていた。理由は定かではないが、明らかに普段と行動が異なっている。つまりこれはチャンスである。今まで正門までしか成し得なかった放課後の尾行を延長できるのだ。みすみす逃すわけにはいかない。
翔真は学校の敷地を出てからも、伊織の後ろ姿を眺めて歩いた。翔真の帰り道の方向である。そこから外れて後を追っているわけではない。行きと帰りで通っている道である。すなわち合法である。目的地が同じ移動教室と類する形である。前方に伊織がいる。それだけのことである。
伊織はどこを目指しているのだろう。この近辺に伊織の行きそうな場所などあるだろうか、と小首を傾げてしまいそうになったところで、ハッと思い出した。あるではないか。間違いなく伊織が行きそうなところが。翔真は一人納得して頷いた。
書店だ。翔真の帰り道の途中には、書店がある。本に興味があるわけではない翔真は、毎日通っていても立ち入らない書店。だが、暇さえあれば本を読んでいる伊織であれば、自宅と真逆の場所に書店があったとしても、億劫に思わず立ち寄るかもしれない。
不意に閃いた予想が当たっていれば、ひとまず書店までは様子を窺えそうである。おまけに中までついていけば、伊織が普段読んでいる系統についても判明するかもしれない。ずっと知りたくて、しかしカバーに阻まれ為す術もなかった事柄だ。降って湧いたような幸運を掴まない手はない。
翔真は一点を見つめてごくりと唾を飲んだ。翔真を追い抜いていった生徒は、伊織の帰り道の方向へ曲がった。しかし当の伊織は、いつもとは逆の道を進んでいた。どこへ行くつもりなのだろう。
突然のイレギュラーに動作が一時停止してしまったが、気を取り直した翔真はスマホを触るのを中断し、徐に足を動かした。なぜか胸の鼓動が高鳴っていた。理由は定かではないが、明らかに普段と行動が異なっている。つまりこれはチャンスである。今まで正門までしか成し得なかった放課後の尾行を延長できるのだ。みすみす逃すわけにはいかない。
翔真は学校の敷地を出てからも、伊織の後ろ姿を眺めて歩いた。翔真の帰り道の方向である。そこから外れて後を追っているわけではない。行きと帰りで通っている道である。すなわち合法である。目的地が同じ移動教室と類する形である。前方に伊織がいる。それだけのことである。
伊織はどこを目指しているのだろう。この近辺に伊織の行きそうな場所などあるだろうか、と小首を傾げてしまいそうになったところで、ハッと思い出した。あるではないか。間違いなく伊織が行きそうなところが。翔真は一人納得して頷いた。
書店だ。翔真の帰り道の途中には、書店がある。本に興味があるわけではない翔真は、毎日通っていても立ち入らない書店。だが、暇さえあれば本を読んでいる伊織であれば、自宅と真逆の場所に書店があったとしても、億劫に思わず立ち寄るかもしれない。
不意に閃いた予想が当たっていれば、ひとまず書店までは様子を窺えそうである。おまけに中までついていけば、伊織が普段読んでいる系統についても判明するかもしれない。ずっと知りたくて、しかしカバーに阻まれ為す術もなかった事柄だ。降って湧いたような幸運を掴まない手はない。