嘘と欲求
カメラアプリを開き、伊織と猫を映した。二本の指で画面を拡大する。手が震えていた。本の奥付を撮った時よりも震えていた。被写体が人か物か、生があるかないかの違いだろうか。
今回は人間と動物。生きている。撮っていることに気づかれる場合がある。そうなる前に、早く撮らなければ。シャッターチャンスがいつ終わるか予測ができない。何でもいいから撮る。いいから撮る。撮る。撮れ。撮れ。撮れ撮れ撮れ。
画面を、タップした。数回、タップした。回数分のシャッター音が、やけに大きく耳に響いた。無意識に息を止めていた。苦しくなった。我に返った。息をした。画面に意識を向けた。血の気が引いた。後退った。シャッター音が鳴り響いた。ビクッと肩が上がった。誤って画面に指が触れてしまった。
画面の中で、翔真は伊織と、目が合っていた。伊織は確実に、自分にスマホを向ける翔真を、認識していた。スマホを弄る角度ではなく、写真を撮る角度であることにも、きっと気づいた。
猫から手を離した伊織が、徐に立ち上がった。猫がびっくりしたように逃げ出した。伊織は猫には目もくれず、まるで感情の読めない表情で翔真を凝視していた。驚きとも憤りとも言えない表情だった。
視線だけで追い詰められている切迫感を覚えた。その圧に堪えきれなくなった翔真は、弾かれたように来た道を駆け出した。
伊織の写真を撮った。許可など取っていなかった。紛れもなく、盗撮だった。書店で顔を合わせた時のように、偶然、などと言える状況ではなかった。
自宅まで追いかける計画は中止だ。中止せざるを得ない。続行はできない。伊織の自宅を知るのはまた今度だ。
全力疾走しながら、時折背後を見る。伊織は追いかけてきていない。それでも、不安だった。翔真は走り続けた。慣れない道をがむしゃらに、走り続けた。
今回は人間と動物。生きている。撮っていることに気づかれる場合がある。そうなる前に、早く撮らなければ。シャッターチャンスがいつ終わるか予測ができない。何でもいいから撮る。いいから撮る。撮る。撮れ。撮れ。撮れ撮れ撮れ。
画面を、タップした。数回、タップした。回数分のシャッター音が、やけに大きく耳に響いた。無意識に息を止めていた。苦しくなった。我に返った。息をした。画面に意識を向けた。血の気が引いた。後退った。シャッター音が鳴り響いた。ビクッと肩が上がった。誤って画面に指が触れてしまった。
画面の中で、翔真は伊織と、目が合っていた。伊織は確実に、自分にスマホを向ける翔真を、認識していた。スマホを弄る角度ではなく、写真を撮る角度であることにも、きっと気づいた。
猫から手を離した伊織が、徐に立ち上がった。猫がびっくりしたように逃げ出した。伊織は猫には目もくれず、まるで感情の読めない表情で翔真を凝視していた。驚きとも憤りとも言えない表情だった。
視線だけで追い詰められている切迫感を覚えた。その圧に堪えきれなくなった翔真は、弾かれたように来た道を駆け出した。
伊織の写真を撮った。許可など取っていなかった。紛れもなく、盗撮だった。書店で顔を合わせた時のように、偶然、などと言える状況ではなかった。
自宅まで追いかける計画は中止だ。中止せざるを得ない。続行はできない。伊織の自宅を知るのはまた今度だ。
全力疾走しながら、時折背後を見る。伊織は追いかけてきていない。それでも、不安だった。翔真は走り続けた。慣れない道をがむしゃらに、走り続けた。