嘘と欲求
 鉛のように重たいその足で、今度は公園へ向かった。伊織がいるかもしれない。猫と戯れているかもしれない。

 特定された場所にわざわざ出向くだろうかという疑念はあったが、首を振って無視した。公園には入らなくとも、前を通るくらいはするかもしれない。

 見かけたら追いかけて声をかけるのだ。今日こそは、必ず、伊織に会えるはずだ。昨日もそう断定していた。

 精神的苦痛のあまり嘔吐した次の日から、翔真は悪い虫に取り憑かれたみたいに、書店と公園をひたすら往復するようになっていた。

 ストーカーと貶されても強く否定できないほどに一日中血眼になって伊織を探し回っているのに、影の一つも見つけられていない。伊織は家から出ていないのだろうか。出られないほどに追い詰められているのだろうか。

 ズボンのポケットから、常に持ち歩いているスマホを取り出した。禁断症状のように、確認せずにはいられないSNSを開く。見ても気分がブルーになるだけだと分かっていながらも、現状を把握せずにいるのは落ち着かない。

 敵はどこまで迫ってきているのか。炎は大人しくなってきているのか。僅かな変化すら見逃せば、死角から心臓を貫かれてしまうのではないかと気が気でなかった。翔真は半ば緊張しながら画面に指を滑らせた。

【この画像の人、雨宮伊織って名前らしいね】

【いつ見ても物凄いイケメンなのに、歪んだ性癖が全部台無しにしてる】

【雨宮伊織がどこの学校の奴かすぐ分かりそうだけど、意外とまだ判明してない?】

【画像だけで場所特定できる人ってどうやってんの。純粋な疑問なんだけど】

【特定班、情報待ってるよ】

【今更この炎上の流れ調べてみたけど、悪いのは普通に投稿主じゃない? 嘘に盗撮にストーカー行為。そんな犯罪じみた行動が明らかになったら、そりゃこうなるでしょ】
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