始まりは一夜の出会いから
 カフェで食事を済ませた後、到着したのは最近出来た街中にある水族館だった。

 数か月前に出来た当時は凄い人気で入れなかったけど、今ではほんの少し落ち着いている。それでも土曜日なので人は多い。


「ここ、来てみたかったんですよね。まさか有咲さんと来られるなんて、嬉しいです!」

「もう、またそんなことを言って…」

「あ、冗談だと思ってます?本気ですけど」


 そう言いながら少し不貞腐れる表情も可愛らしい。

 その表情に少し笑っていると佐々木さんはふっと微笑んでそのまま私の手を握る。


「はぐれるといけないので手は離さないでくださいね」

「…はい」


 子供じゃないのに子供に言い聞かせるみたいな優しい言い方。

 手が大きくてしっかり握られているからそもそも手なんて離せない。

 今日、出会ってからずっと意識して、ドキドキさせられていて苦しい。

 そんな気持ちで中に入ると、思ったよりも本格的な作りになっていてすごく綺麗だった。

 ふれあいコーナーみたいなのも用意されてて、2人で触れては笑って、思いっきりはしゃいで一緒に楽しんでくれていた。

 夢中になって立ち止まって見てしまって、ぶつかりそうになった時も、肩を佐々木さんの近くまで抱き寄せられて「ここならゆっくり見れますよ」と気を回してくれたり、ずっとドキドキしてうるさかった。

 子供っぽい所にも大人っぽい所にもときめかされている。

 本当に気を緩めたらすぐにでも好きというスイッチが入ってしまいそうな気がして、ずっと気が抜けなくて苦しい。

 この苦しさは気が張っているせいだと自分に言い聞かせた。
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