始まりは一夜の出会いから
「そんな、何とかなりませんか?後の予定がこちらもありまして…」


 そう言われましても、と返したいが返すわけにもいかず、こちらも困る。

 言った言わないの話はキリが無い。こちらでは弊社の担当と、来社して頂いた担当の方のやりとりの確認も出来ないため、どちらがミスをしているのかなども分からないし、当然調整も出来ない。

 上司を呼ぼうか、営業部に相談しようかと悩んでいるとその隣から「まあまあ!落ち着いてください!」と陽気な声が聞こえる。

 打ち合わせ後の新くんがこちらに来てくれていた。


「え?あの、失礼ですが…?」

「初めまして。佐々木と申します」


 そう言いながら名刺を丁寧に渡すと、お相手は「はあ…?」と言った感じで受け取る。

 そりゃ横からここの担当ではない人が急に現れたら困惑もする。


「アポイント日違っていたんですよね、やり取りはメールですか?」

「そうですけど…」

「ノートパソコンお持ちですか?もしメール同期されてたら1度確認してみませんか。受付の方に言っても、受付の方がやり取りされたわけではありませんから、1度落ち着いて確認してみましょ」


 穏やかな声でもう一度確認をと促してくれる。

 メールを確認したところ、先方の情報違いだった様で、申し訳なさそうな表情でこちらに謝罪をしてくる。


「大変申し訳ございません!また改めます」

「はい!明日、お待ちしておりますので」


 笑顔で送りだして、深く頭を下げる。

 先方の方は新くんにもお辞儀をして出口の方へ向かった。
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