家族に裏切られ全てを奪われた私は、辺境地に住む強くて心優しい彼に出逢い、沢山の愛と優しさに触れながら失ったモノを取り戻す
 そして、結婚して約半年が過ぎると、エリスはシューベルトの愛人たちが住まう屋敷よりも狭い別宅へと移されていた。

「エリス様、お食事をお持ちしました」
「ありがとう。そこへ置いておいて」
「はい」

 妻であるというのに、まるで罪人の様に囚われ、自由を奪われた生活を余儀なくされたエリス。

 この仕打ちは屈辱的で何とも言えない気持ちだけどシューベルトに逆らう事が出来ず、最近では屋敷から外へ出る事すら禁じられていた。

 表向きには体調を崩している事にされているので、エリスの姿を目にしなくても誰も不思議に思わなかった。

 そんなエリスと顔を合わせるのは食事を運ぶメイドくらいのもので、エリスはつまらない毎日を与えられた部屋で過ごしているだけだった。

 そんな変わり映えのしないある日の事、お手洗いから部屋へ戻る道すがら、本宅と別宅を繋ぐ中庭から聞き覚えのある声が二つ、聞こえてくる。

 一つはシューベルトのもの。

 そして、もう一つは――

「ねぇ、シューベルト、そろそろいいんじゃない?」
「そうだな。体調が悪化した事にして、そろそろ作戦を実行するか」
「いよいよ、あの邪魔な女を始末する事が出来るのね。嬉しいわぁ。お母様も私も今か今かと待ち望んでるのよ」
「俺もだよ。国の為とはいえ、あんな辛気臭い女と結婚なんて物凄く嫌だった。ようやくお前と一緒になれると思うと嬉しいよ――リリナ」

 そんな不穏な会話をシューベルトと交わしていたのは他でも無い、妹のリリナだったのだ。
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