恋のリハーサルは本番です
第26話 それでも、好きだから
稽古場の隅。照明が落とされ、蛍光灯の白い光だけが二人を照らしていた。
蓮は台本を閉じ、深く息を吐く。あかりは向かいの机に座り、ノートパソコンの画面を睨みつけていた。
「……そんな顔、するなよ」
蓮の声は静かだった。
「顔に出てた?」
「思いっきりな」
「脚本家としては、役者に見透かされるのは致命的ね」
そう言って笑おうとしたが、唇の端は震えていた。
恋愛リサーチのはずだった。
役者と脚本家として、リアルな恋愛心理を描くための「実験」。
そう言い聞かせながら、もう何度も会って、話して、笑って。
——でも、気づけば彼のことを本気で見てしまっている自分がいた。
「……蓮。これ以上は、もうやめよう」
「あかり?」
「このままだと、リサーチじゃなくなっちゃう」
あかりはノートパソコンを閉じ、視線を落とした。
「脚本家が役者に恋して、物語が歪むのはダメ。プロ失格だもの」
沈黙。
蓮は立ち上がり、机の向こうからゆっくりと彼女に近づいた。
距離が縮まるたびに、心臓が速くなる。
「だったら俺も失格だな」
「え?」
「役者として、脚本家を好きになったんだから」
その言葉に、あかりは息を呑んだ。
「でも、これも"リアル"だろ?」
「……リアルすぎるのよ」
「脚本に書けないくらいのリアル。あかりが書くどんな恋より、本物のやつだ」
彼の目は真っ直ぐで、嘘がなかった。
あかりは視線を逸らした。涙が滲んでくる。
「私たちは、仕事仲間なの」
「わかってる」
「だったら、これ以上踏み込んじゃいけない」
「わかってるよ。でも——」
蓮は一歩、踏み出した。
その瞬間、机の脚がかすかに音を立てた。
彼の声が低く、優しく響く。
「それでも、好きだから」
あかりの胸が大きく鳴った。
理性が「やめなさい」と叫ぶのに、心がそれを裏切っていく。
照明の下、二人の影がゆっくりと重なった。
けれど——その距離が完全に埋まる前に、あかりは小さく首を振った。
「ごめん……」
それだけ言って、鞄を手に立ち上がる。
そして、振り返らずに稽古場を出ていった。
残された蓮は、台本を見つめた。
彼女の書いた恋のセリフが、まるで自分たちの今をなぞるように並んでいる。
> 『恋は、予定通りに進まない。だからこそ、面白いの。』
蓮は小さく笑い、呟いた。
「……だったら、俺たちの恋もまだ終わってないはずだ」
蓮は台本を閉じ、深く息を吐く。あかりは向かいの机に座り、ノートパソコンの画面を睨みつけていた。
「……そんな顔、するなよ」
蓮の声は静かだった。
「顔に出てた?」
「思いっきりな」
「脚本家としては、役者に見透かされるのは致命的ね」
そう言って笑おうとしたが、唇の端は震えていた。
恋愛リサーチのはずだった。
役者と脚本家として、リアルな恋愛心理を描くための「実験」。
そう言い聞かせながら、もう何度も会って、話して、笑って。
——でも、気づけば彼のことを本気で見てしまっている自分がいた。
「……蓮。これ以上は、もうやめよう」
「あかり?」
「このままだと、リサーチじゃなくなっちゃう」
あかりはノートパソコンを閉じ、視線を落とした。
「脚本家が役者に恋して、物語が歪むのはダメ。プロ失格だもの」
沈黙。
蓮は立ち上がり、机の向こうからゆっくりと彼女に近づいた。
距離が縮まるたびに、心臓が速くなる。
「だったら俺も失格だな」
「え?」
「役者として、脚本家を好きになったんだから」
その言葉に、あかりは息を呑んだ。
「でも、これも"リアル"だろ?」
「……リアルすぎるのよ」
「脚本に書けないくらいのリアル。あかりが書くどんな恋より、本物のやつだ」
彼の目は真っ直ぐで、嘘がなかった。
あかりは視線を逸らした。涙が滲んでくる。
「私たちは、仕事仲間なの」
「わかってる」
「だったら、これ以上踏み込んじゃいけない」
「わかってるよ。でも——」
蓮は一歩、踏み出した。
その瞬間、机の脚がかすかに音を立てた。
彼の声が低く、優しく響く。
「それでも、好きだから」
あかりの胸が大きく鳴った。
理性が「やめなさい」と叫ぶのに、心がそれを裏切っていく。
照明の下、二人の影がゆっくりと重なった。
けれど——その距離が完全に埋まる前に、あかりは小さく首を振った。
「ごめん……」
それだけ言って、鞄を手に立ち上がる。
そして、振り返らずに稽古場を出ていった。
残された蓮は、台本を見つめた。
彼女の書いた恋のセリフが、まるで自分たちの今をなぞるように並んでいる。
> 『恋は、予定通りに進まない。だからこそ、面白いの。』
蓮は小さく笑い、呟いた。
「……だったら、俺たちの恋もまだ終わってないはずだ」