【2.26公開】ハルくんの、かくしごと。



息を切らしながら改札を抜ける。

ハルくんの方は一切見ない。もしかしたら、ついてきてないかも。

でも、それでもよかった。もう何も聞きたくないし、知りたくない。

柳くん、私分からないままでいいや。

分かってしまったら、これ以上ハルくんと一緒にいられない気がするんだもん。

ずっとバカで、無知で、鈍感なままでいい。


ギリギリ間に合った満員電車。


かろうじで空いているスペースに乗り込もうとしたとき、



「お、まえ…置いてくなよっ…」



後ろから手首をひかれて、振り向くと息を切らしたハルくん。


「扉が閉まります」――アナウンスが響く。


その瞬間、私の手をぎゅっと握り締めて、ハルくんは電車に飛び込んだ。

今日は、いつもよりやけに人が多い。

押し込まれるように揺れる車内。肩と肩がぶつかって、息苦しい。

背中には扉。目の前には赤いネクタイがぶら下がっている。

ハルくんは私の壁になるように、扉に肘をついている。私の頭のてっぺんに、ハルくんが顎を乗せる。



「は、ハルくん…」


「これは、不可抗力」



いや、そうじゃなくて。

ふっと頭が軽くなったかと思えば、私を見下ろすハルくんと目が合う。



「は、ハルくん。私たち、幼なじみだよねっ…」



すがるように。目に涙をためて。

ハルくんは一瞬、切なそうな顔をしてから、すぐに優しい顔をした。



「うん、そうだよ」



その言葉にホッとする。

幼なじみ。まだ、ハルくんの隣にいられる。


< 116 / 273 >

この作品をシェア

pagetop