【2.26公開】ハルくんの、かくしごと。
息を切らしながら改札を抜ける。
ハルくんの方は一切見ない。もしかしたら、ついてきてないかも。
でも、それでもよかった。もう何も聞きたくないし、知りたくない。
柳くん、私分からないままでいいや。
分かってしまったら、これ以上ハルくんと一緒にいられない気がするんだもん。
ずっとバカで、無知で、鈍感なままでいい。
ギリギリ間に合った満員電車。
かろうじで空いているスペースに乗り込もうとしたとき、
「お、まえ…置いてくなよっ…」
後ろから手首をひかれて、振り向くと息を切らしたハルくん。
「扉が閉まります」――アナウンスが響く。
その瞬間、私の手をぎゅっと握り締めて、ハルくんは電車に飛び込んだ。
今日は、いつもよりやけに人が多い。
押し込まれるように揺れる車内。肩と肩がぶつかって、息苦しい。
背中には扉。目の前には赤いネクタイがぶら下がっている。
ハルくんは私の壁になるように、扉に肘をついている。私の頭のてっぺんに、ハルくんが顎を乗せる。
「は、ハルくん…」
「これは、不可抗力」
いや、そうじゃなくて。
ふっと頭が軽くなったかと思えば、私を見下ろすハルくんと目が合う。
「は、ハルくん。私たち、幼なじみだよねっ…」
すがるように。目に涙をためて。
ハルくんは一瞬、切なそうな顔をしてから、すぐに優しい顔をした。
「うん、そうだよ」
その言葉にホッとする。
幼なじみ。まだ、ハルくんの隣にいられる。