【2.26公開】ハルくんの、かくしごと。



覚悟ができているようで、できていない。

17年間、一緒に過ごしてきた時間を手放すには、未練があまりにも濃すぎる。



「ハルくんが、行けっていったんだから。私は…荻原くんのこと好きになりたいし」



俺に抱きしめられながら、どの口がそんなこと言うんだよ。

そう思った瞬間、体は勝手に動いていた。

後ろから顎を掴んで、無理矢理振り向かせる。


前よりも強引に、唇を奪った。

壊れろ。

ドンッと俺の胸を叩く小さい右手を掴んで、さらに強く、唇を押し付ける。

限界。ずっと、限界。頭が割れそうで、もう耐えられない。


(嫌いになって。俺のこと、好きになって)


矛盾した願いが、心の奥でぐちゃぐちゃに絡み合う。



「…っ…んっ…」



唇を離すと、顔を真っ赤にして瞳を揺らしながら俺を見た。



「これで、”また”浮気だな?」



学習能力のないお前が悪い――そう吐き捨てたくなる。


でも違う。ほんとは全部俺が悪い。


たった二文字、「好き」を言葉にできず。

嫌われたいと思いながらも、どこかで「好きになって」と願ってしまう。

強引に欲を押し付ける俺も、全部。

ちあが悪いことなんて、ひとつもない。



「さっ…さい、ていっ…!」



我慢していたのか、涙が溢れだすちあ。

その涙を見て、胸が締め付けられる。

俺が壊した。俺が傷つけた。

それでも、離せない。


< 156 / 273 >

この作品をシェア

pagetop